レビューの論点
抗線溶薬は、子宮内膜(子宮の内腔を覆う組織)で血栓を溶解する酵素を阻害することで出血を減らすように作られている。コクランの研究者らは、月経過多(1回の月経周期あたり80mlを超える出血があるものと定義)がある女性において、これらの薬(トラネキサム酸)の効果をプラセボや他の治療方法と比較した研究を総括した。
背景
抗線溶薬は、月経過多の管理に用いられている。しかし、以前から、下肢や肺に血栓ができる危険があると懸念されてきた。月経過多の治療に用いる薬は、他にも数多く存在する。我々は、これらの治療による利点と危険性を比較した。
研究の特性
抗線溶薬と他の治療法を比較した13のランダム化比較試験(RCT)が同定され、対象となった過多月経がある女性は1312人であった。エビデンスは、2017年11月現在のものである。
主要な結果
抗線溶薬は、有害事象の発生率を上昇させることなく、15~50歳の女性における月経過多を改善させる。エビデンスから、トラネキサム酸を服用した対象者は、1回の月経周期あたり経血量40~50%減少することが示された。抗線溶薬による月経過多の治療は、子宮内黄体ホルモン放出システム(避妊目的などで用いられる、レボノルゲストレルを放出する子宮内に装着するプラスチック製の小器具)を除いた他の治療法より優れていた。
プラセボを服用した女性の10.9%が月経過多が改善したと報告するのに対し、トラネキサム酸を服用した女性の36.3%が改善したと報告する、とエビデンスは示唆している。
トラネキサム酸は、おそらく月経過多の女性の生活の質(QOL)を改善するだろう。
抗線溶薬を服用した女性において、プラセボや他の治療法に比べて、生命にかかわるような血栓症を含んだ副作用の頻度が増加したというエビデンスは認められなかった。静脈血栓塞栓症をアウトカムとした研究が2つ同定されたが、残念なことに、これらの研究はサンプルサイズが小さかったため得られた結果が単なる偶然によるものかどうかを判断できなかった。
エビデンスの質
エビデンスの質は中等度から低度だった。これらの研究の主な限界は、盲検化の欠如(対象や研究者がどの薬物を投与しているかわかっている)や研究方法が明確に示されていないことによるバイアスのリスク、不正確性(測定間隔がかなり大きな反復測定)、矛盾(サンプルサイズが増加するにつれて、サンプルのパラメータ値が真のパラメータ値から広がって分布している)によるものである。
《実施組織》杉山伸子 内藤未帆 翻訳[2018.07.24] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000249》