エキナセアの植物製剤は欧州の一部の国々や北米で風邪に広く使用されている。 市販されているエキナセア製剤は実にさまざまである。なぜなら、異なるタイプ(種)や部位(草の葉や根または両方)が使われており、さまざまな製造方法(乾燥、アルコール抽出、または新鮮な植物から汁を搾り出す)で作られ、さらに他のハーブを添加する場合もあるためである。
風邪または誘発性ライノウイルス感染症の予防および治療において、4631例を対象に複数の異なるエキナセア製剤の有効性を調べた24件の比較臨床試験について評価した。 本レビューでは、種、部位、剤形が異なるさまざまなエキナセア 製剤が、ランダム化試験でプラセボと比較されてきたことを明らかにしている。 試験に使われた製剤がかなり異なるため、確実な結論を出すのは困難であった。 Cochraneのバイアスのリスクツールにおける5つのカテゴリーのすべてで、5件の試験が 低リスクと評価された。 さらに5件の試験が低リスクと評価され、1つのカテゴリーでリスク不明とされた。 8件の試験が1つ以上のカテゴリーで高リスクと評価され、残りの6件がリスク不明とされた。
大部分の試験では、風邪の症状が現れた後にエキナセア製剤を服用し、プラセボと比較して罹患期間が短縮されるかについて調べていた。 風邪の治療において、一部のエキナセア製剤はプラセボより有効な可能性があるが、臨床的に意義があるとするエビデンスは全般的に弱い。 概して、風邪の予防についてエキナセアを調べた試験では、風邪の発症が統計学的に有意に減少するという結果を示さなかった。 しかし、ほぼすべての予防に関する試験で、わずかな予防効果の傾向がみられた。 予防および治療に関する試験では、脱落した患者数または有害作用を報告した患者数について、治療群とコントロール群に有意差はみられなかった。 しかし、予防に関する試験では、治療群でより多くの患者が有害事象により脱落する傾向がみられた。
本エビデンスは2013年7月現在のものである。
エキナセア製剤について風邪の治療に有効であることは示されなかったが、エキナセア製剤の一部にはわずかな効果をもたらす可能性がある。 個々の予防投与試験の結果では、一貫して好ましい傾向を示しているが(有意差なしの場合)、効果に関する臨床的意義については疑問が残る。
エキナセアはキク科の植物製剤で欧州や北米では風邪に広く使用されている。 ほとんどの消費者や医師は、エキナセアという名称で販売されている製剤はその組成が実にさまざまであることを知らないが、これは主に、さまざまな植物原料と抽出方法を用い、さらに他の成分も添加しているためである。
風邪の予防と治療に対して、エキナセア製剤がプラセボと比較して効果的かつ安全であるとするエビデンスの有無を評価すること。
CENTRAL 2013年5号、MEDLINE(1946年~2013年5月第5週)、EMBASE(1991年~2013年6月)、CINAHL(1981年~2013年6月)、AMED(1985年~2012年2月)、LILACS(1981年~2013年6月)、Web of Science(1955年~2013年6月)、CAMBASE(期限なし)、the Centre for Complementary Medicine Research(1988年~2007年9月)、WHO ICTRP、およびclinicaltrials.gov (最終検索:2013年6月5日)を検索し、参考文献リストを調べ、当該分野の専門家に発表済みおよび未発表の研究について尋ねた。
エキナセア単剤とプラセボを比較したランダム化比較試験(RCT)
2名以上のレビュー著者が独立して適格性と試験の質を評価し、データを抽出した。 主要有効性アウトカムは、予防に関する試験中に1回以上風邪を引いた参加者数、および治療に関する試験中に風邪を引いていた期間とした。 調査したすべての試験で、主要安全性・許容性アウトカムは、有害事象で脱落した参加者数とした。 コクランのバイアスのリスクツールを用いて試験の質を評価した。
4631例を対象とした24件の二重盲検試験が、エキナセア製剤とプラセボについて総計33の比較検討を実施しており、選択基準を満たすものであった。 種や部位が異なるさまざまなエキナセア製剤が使用されていた。 7件の試験では、Echinacea purpureaの地上部を用いた製剤に関するエビデンスが得られた。
バイアスのリスクについて、10件の試験は低リスク、6件はリスク不明、8件は高リスクと判断された。 10件の試験では13の比較検討で予防について調査しており、15件の試験では20の比較検討で風邪の治療について調査していた(1件の試験では予防と治療の両方について調べていた)。
研究の臨床的な異質性が大きいため、主解析のための統合は行わなかった。 1回以上風邪を引いた患者数を報告した予防に関する12の比較検討では、統計学的な有意差はなかった。 しかし、これらの結果に関する事後統合では10%~20%の相対リスク減少を示している。 風邪の期間に関するデータを報告した6件の治療に関する試験のうち、2件のみでプラセボを上回るエキナセアの有意な効果を示した。 予防および治療に関する試験では、脱落した患者数または有害作用を報告した患者数について、治療群とコントロール群に有意差はみられなかった。 しかし、予防に関する試験では、治療群でより多くの患者が有害事象により脱落する傾向がみられた。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.20] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。