より多くの魚類を摂取することは、喘息を低減しうる1つの方法として推奨されている。魚類を多く摂取する人種(エスキモーなど)でも喘息の発症率は低い。その他のコミュニティにおける食事には飽和脂肪が多く含まれるようになったことから、喘息も増加している。理論的には、魚油の成分によって炎症が低減することである。炎症は肺の気道に腫脹を引き起こし、喘息発作に至る。しかし、試験の本レビューでは、喘息患者が食事により多くの魚油を取り入れるようにしても喘息は改善されなかったと判明した。
エビデンスが少ないため、喘息コントロールの改善を目的として、喘息患者に海洋n-3脂肪酸(魚油)の食用摂取を補助または調整するよう推奨することはできない。同様に、摂取した場合のリスクに関するエビデンスもない。
疫学的研究では、海洋脂肪酸(魚油)が豊富な食事には関節リウマチや恐らく喘息などの炎症性疾患に対して有益な効果があると示唆されている。
(1)喘息における海洋n-3脂肪酸(魚油)補給の効果を評価すること。(2)喘息における魚油豊富な食事の効果を評価すること。
Cochrane Airways Group Specialised Register.を検索した。また、検索した試験の参考文献一覧を検索し、魚油製造業者に連絡を取った。2010年5月現在まで検索。
2歳以上の喘息患者を対象としたランダム化比較試験を組み入れた。試験期間は4週間以上であることとした。二重盲検試験が好ましかったが、組み入れのために単一盲検や非盲検の試験もレビューした。
4名のレビューアすべてが、各論文を読み、その論文の識別情報を盲検化した。組み入れに関する決定は、単に多数性で行った。それぞれ質の評価を実施した。
唯一の比較は、海洋n-3脂肪酸補給とプラセボとの間のものであった。試験が不十分であったため、食事療法のみを評価できなかった。
1986年〜2001年に実施された9件のランダム化比較試験が選択基準を満たした。7試験が並行デザインであり、2試験がクロスオーバー試験であった。8試験では、魚油とプラセボを比較しており、1試験では、海洋n-3脂肪酸の多量補給と少量補給を比較していた。2試験は小児を対象とし、残り7試験は成人を対象として実施された。組み入れた試験のいずれでも、喘息増悪、健康状態や入院は報告されなかった。
解析可能な転帰のいずれに対しても一貫した効果は認められなかった。努力呼気1秒量(FEV1)、ピークフロー値、喘息症状、喘息治療薬使用や気管支過敏症。食事療法と魚油補給とを併用した小児対象の試験の1件で、ピークフロー値改善および喘息治療薬の使用量減少がみられた。魚油補給に伴う有害事象は認められなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
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