家族性高コレステロール血症の管理を目的とした食事の改善

家族性高コレステロール血症は、血中コレステロールの増加および早発性虚血性心疾患を特徴とする遺伝病である。食生活の改善が、低密度リポタンパク質コレステロール(悪玉コレステロール)値を低下させるための重要な管理法のひとつである。最近、いくつかの高脂血症治療薬が、小児の家族性高コレステロール血症の治療に安全で効果があることが示された。しかし、食事療法が、単独でも、あるいは薬物療法との併用でも、依然として重要である。食事を改善するにはいくつかの方法がある。このレビューでは、コレステロール低下食の組み合わせや、単独での比較を試みた。このような食事介入には、オメガ3脂肪酸や植物ステロールまたは植物スタノール、大豆蛋白を追加した食事療法が行われた。今回の更新では15件の試験を対象とした。この15件の試験では、リスク評価に用いた項目のほとんどについて、バイアスのリスクは低いか不明であった。試験はいずれも短期間で、大半がクロスオーバーのデザインを採用していた。さまざまな療法について、コレステロール低下食と比べると、ほとんどの比較で有意差は認められなかった。しかし、植物ステロールに関しては、総コレステロール値、血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)値の点で有意な有益性が認められた。しかし、結論を出す前に、クロスオーバー試験の結果を統合する方法の問題点を検証する必要がある。コレステロール低下食の潜在的な有益性と有害性を評価するためには、並行群を設けた長期試験を実施する必要がある。

著者の結論: 

虚血性心疾患の兆候・証拠と発生頻度、死亡数および死亡時の年齢とした主要アウトカムについては、これに関するデータがないため、家族性高コレステロール血症に提唱されているコレステロール低下食や他の食事介入が有効であるかどうかの結論を導くことはできない。コレステロール低下食や、コレステロール低下食にオメガ3脂肪酸、植物ステロールまたはスタノール、大豆蛋白、食物繊維を追加することによる有効性を検討するためには、大規模並行ランダム化比較試験が必要である。

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背景: 

小児および成人の家族性高コレステロール血症(FH)の管理として、コレステロール低下食をはじめ、他の様々な食事介入を単独で実施することや、薬物療法の補助療法として実施することが提唱されてきた。しかし、最も適切な食事療法については合意に至っていない。FHには植物ステロールが広く用いられているが、患者はフィトステロールやスタノールなど、別の名称で認識していることもある。

目的: 

家族性高コレステロール血症の小児および成人を対象に、コレステロール低下食の導入が、食事療法の非介入よりも、虚血性心疾患を減少させ、コレステロール値を下げる効果があるかどうかを検討すること。さらに、オメガ3脂肪酸、大豆蛋白、植物ステロールまたは植物スタノールで補充したコレステロール低下食の有効性を比較すること。

検索戦略: 

コクラン・ライブラリの最新版に合わせて更新されるCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)の電子的検索、3カ月毎のMEDLINE検索およびJournal of Inherited Metabolic Diseaseの前向きハンドサーチをもとに作成されるCochrane Cystic Fibrosis and Genetic Disorders Group Inborn Errors of Metabolism Trials Registerを検索した。 このCochrane Cystic Fibrosis and Genetic Disorders Group Inborn Errors of Metabolism Trials Registerを最後に検索したのは2013年8月22日である。さらに、2012年2月5日までのPubMedを検索した。

選択基準: 

家族性高コレステロール血症の小児および成人を対象に、コレステロール低下食と、他の食事療法もしくは食事療法の非介入とを比較したランダム化比較試験について、発表、未発表に関わらず採用した。

データ収集と分析: 

2人の著者が独立して試験の適格性およびバイアスのリスクを評価した。1人がデータを抽出し、同僚がデータの抽出を独立して検証した。

主な結果: 

2014年の更新では15件の試験を取り上げた。比較群が7つ、参加者が計453例であった。採用した試験は、リスク評価に用いたパラメーターのほとんどで、バイアスのリスクが低いか不明であった。どの試験も追跡期間が短期間であったため、評価は短期アウトカムにとどまった。主要アウトカム(虚血性心疾患の発生頻度、死亡数および死亡時の年齢)は、いずれの試験でも評価されていなかった。予定した比較に対する二次アウトカムの大半で、有意差は認められなかった。しかし、次の比較およびアウトカムで有意差を認めた。植物ステロールとコレステロール低下食の比較において、総コレステロール値(平均差 0.30 mmol/l [95%信頼区間0.12~0.48])と、血清LDLコレステロールの低下(平均差 -0.60 mmol/l [95%CI -0.89~-0.31])により植物ステロールに優位な結果が得られた。空腹時血清HDLコレステロール値が上昇し(平均差 -0.04 mmol/ l [95%CI -0.11~0.03])、血清トリグリセリド濃度が低下した(平均差 -0.03 mmol/l [95%CI -0.15~-0.09])が、この2項目の変化に有意差は認められなかった。同じく、グアーガムをベザフィブラート投与に併用して摂取すると、ベザフィブラート単独療法に比べて総コレステロール値およびLDL値が低下した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.26]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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