人工呼吸器管理を受けた極低出生体重早産児での慢性肺疾患の治療を目的とした吸入副腎皮質ステロイド投与と全身ステロイド投与との比較

レビューの論点

出生体重1500g以下また妊娠32週目以下で出生した人工呼吸器を装着した早産児に対し、生後7日以降に吸入副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)の使用、または、全身へのステロイド投与を行った場合における修正週数(訳注:予定日を40週0日とし、本来の在胎期間を加味して補正した新生児の成育日数の数え方のこと)36週時点での慢性肺疾患の発生率に対する効果を比較する。

背景

早産児(妊娠37週以前の正期産前に生まれた児)は、しばしば呼吸(人工呼吸器)のサポートが必要になる。侵襲的な(気管内にチューブを入れるなどの)人工呼吸の補助を長期間必要とする児は、慢性肺疾患になることが多い(修正週数36週で補助酸素が必要と定義される)。肺の炎症が原因の一部と考えられている。ステロイドは、肺の炎症や腫れを抑える一方で、重篤な副作用を伴うことがある。ステロイドの使用は、脳性麻痺(運動障害)や発達遅延と関連する。有害な作用(副作用)を抑える方法として、肺に直接届くようにステロイドを吸入させる方法が試みられている。

検索日

2017年2月23日

試験の特徴

対象となった3件の試験はすべてランダム化されていたが、介入の盲検化およびアウトカム測定方法が異っていた。生後12日から21日の乳児を対象とした2件の試験(139人を登録)のデータは統合されていたが、別の1件の試験(292人を登録)のデータは、出生後72時間未満の乳児をランダム化していたため、分けて報告されていた。アウトカムを測定した時期が試験によって異なるため、一部、結果を統合することは不適切であった。また、治療開始時ではなく、ランダム化した時点での乳児の死亡数も報告され、結果、死亡数が多くなっている1件の試験がある。

1件の研究は助成金を受け、また関連企業からエアロチャンバー、ブデソニドの定量吸入器およびプラセボの提供も受けていた。利益相反は認められなかった。

主な結果

生後12日から21日の間にランダム化され、本レビューの主要アウトカムの対象となった370人の乳児を対象とした2件の試験から得られたエビデンスによると、生後7日以降での吸入でのステロイド投与は、全身へのステロイド投与と比較して、修正週数36週目における死亡または慢性肺疾患の発生率の低下を示さなかった。出生後72時間未満の乳児をランダム化した1件の試験のエビデンスでは、死亡または慢性肺疾患の発生率で差異はなかった。

副次アウトカムの対象となった431人の乳児を対象とした3件の研究から得られたエビデンスによると、生後7日以降での吸入でのステロイド投与は、全身へのステロイド投与と比較して、修正週数36週目における人工呼吸の期間、酸素使用期間および入院期間の長さに有意な差はなかった。同じく、気管支肺異形成、高血糖、高血圧、グレードIII~IVの脳内出血、脳室周囲白質軟化症、壊死性腸炎、消化管出血、ステージ4以上の未熟児網膜症、培養で証明される敗血症、または有害作用の発生率においても有意な変化はなかった。

有害事象の報告では、吸入ステロイド投与と全身へのステロイド投与で違いはないが、ステロイド治療の潜在的な合併症について、一部が報告されていない。ステロイドを日常的に用いることで、慢性肺疾患のリスクがある児の健康状態が全体的に改善されるかについては、さらなる研究が必要である。

エビデンスの質

エビデンスの質(GRADE基準による)は中等度から低度であった。

訳注: 

《実施組織》屋島佳典 翻訳、小林絵里子 監訳[2021.10.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002053.pub4》

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