高周波数の神経刺激は、ひどい月経痛を緩和するのに役立つ可能性がある。月経困難症は高頻度に認められる疾患であり、ひどい月経痛を指す。経皮的神経電気刺激(TENS)は、神経を刺激し疼痛を緩和するため、皮膚に電極を置き電流を送るものである。子宮収縮に直接作用するのではなく、疼痛の信号を受信したり把握したりするための身体能力を変化させると考えられている。試験のレビューにより、高頻度のTENSが役立つ可能性があることが明らかになったが、低頻度のTENSの効果を評価するための十分なエビデンスはない。今後もさらなる研究が必要である。
多数の小規模試験により、高周波数のTENSは月経困難症の治療に対し有効であることが明らかになった。1件の試験で報告された軽度の有害作用についてはさらなる調査が必要である。月経困難症の緩和に対する低周波数のTENSの有効性を評価するためのエビデンスは不十分である。
月経困難症(痛みを伴う子宮痙攣)に対する非ステロイド性抗炎症薬や経口避妊薬などの薬物療法は、子宮筋の活動を抑えることにより作用する。経皮的神経電気刺激(TENS)は、さまざまな疾患の疼痛緩和に有効であることが示されている非薬理学的介入である。TENSは、子宮収縮に直接作用するのではなく、疼痛の信号を受信したり感知したりするための身体能力を変化させる可能性がある。
原発性月経困難症に対する高周波数および低周波数のTENSの有効性を、プラセボ、未治療、または薬物療法と比較し評価すること。
関連性のあるランダム化比較試験を同定するため、Cochrane Menstrual Disorders and Subfertility Group Register of controlled trials、コクラン・ライブラリ(2009年、第1号)、MEDLINE、MBASE、CINAHL、AMEDの電子的検索を行った(2009年4月更新)。Cochrane Complementary Medicine Field Register of controlled trials (CISCOM)も検索した。UK National Research Register、Clinical Trial Registerおよび選択した試験の引用リストから試験の同定を試みた。
選択基準は、原発性月経困難症に対する、TENSとプラセボ、未治療、または薬物療法とを比較したランダム化比較試験(RCT)とした。除外基準は、軽度、低頻度、または続発性の月経困難症、そして子宮内避妊器具(IUD)に関連する月経困難症とした。
本レビューの選択基準を満たした7件のRCTを同定した。本更新では新たな試験は同定されなかった。2名のレビュー著者が、品質評価およびデータ抽出をそれぞれ行った。メタアナリシスに適さないデータは記述的データとして報告され、検討課題に加えた。アウトカム指標は、疼痛緩和(2値、視覚的アナログ尺度、記述的)、有害作用、治療以外の鎮痛剤の使用、休業または休学とした。
全体として、高頻度のTENSは、プラセボのTENSと比較して疼痛緩和により有効であることが示された(OR 7.2、95%CI 3.1~16.5)。低周波数のTENSは、プラセボのTENSと比較して疼痛緩和に対する有効性は認められなかった(OR 1.48、95%CI 0.43~5.08)。高周波数のTENSが、低周波数のTENSと比較しより有効であるかどうかに関する結果は矛盾するものであった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.27]
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