過多月経に対する子宮内黄体ホルモン放出システムの使用

レビューの論点

多量の月経時出血(過多月経)の治療としてのレボノルゲストレル放出型子宮内システム(LNG-IUS)の有効性、受容性および安全性を評価した。

背景

月経時の出血が重く、多いこと(過多月経)は、生殖年齢(初潮から閉経までの期間)の女性が頻繁に遭遇する問題である。月経時の出血が多いと感じる女性は、生活の質(QOL)が低下し、医療機関をより受診する傾向がある。出血量の多い女性のため、効果の異なる、さまざまな治療法が利用可能である。これらの治療法には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗線溶薬、経口避妊薬およびプロゲステロン(黄体ホルモン)製剤などの経口錠剤や、子宮内黄体ホルモン放出システム(少量の黄体ホルモンを持続的に供給する、子宮内に留置される装置)が含まれる。子宮内黄体ホルモン放出システムは、避妊を目的として使用されることもある。薬物治療が効果的でない場合、子宮摘出術または子宮内膜アブレーション(子宮内膜を焼灼する術式)のいずれの外科的手術もよく選択される。

研究の特性

本レビューには、2019年6月までに実施された25件のRCTが含まれており、月経時の出血量が多い2511人が参加者となっている。

主な結果

解析に組み入れた全ての研究が子宮内黄体ホルモン放出システム(LNG-IUS)(レボノルゲストレルを1日20μg放出する)の効果を評価しているため、このレビューの結論はこの装置のみに言及したものである。LNG-IUSは、他の薬物療法よりも月経時の重い出血を軽減し、QOLを向上させる効果がある可能性が示唆された。

LNG-IUSと子宮内膜アブレーション術との間で、月経時の重い出血の軽減やQOLの向上に違いがあるかどうかは不明であった。満足度への影響も同様であると思われる。LNG-IUSを使用している女性は有害事象が発生しやすいようだが、これが原因で女性が治療を中止することはなかったようである。

LNG-IUSが月経出血の減少に対して子宮摘出術と同等の効果があるかどうかは不明であるが、満足度やQOLの向上は同程度であると考えられる。LNG-IUSを試した女性の中には、月経時の出血量が多いために最終的には子宮摘出術を受けることになった人もいたが、LNG-IUSは子宮内膜アブレーション術や子宮摘出術よりも全体的なコストが低いようである。

エビデンスの確実性

このレビューの試験の多くは小規模(参加者100人未満)であり、バイアスのリスクが高いものも存在した。それぞれの比較における総合的なエビデンス(科学的根拠)の確実性は、「非常に低い」~「中程度」の範囲であった。エビデンスの限界として、研究方法の報告が不十分であること、そして研究間の非一貫性が挙げられる。1件の大規模研究では10年間にわたってLNG-IUSと子宮摘出術とを比較しており、他の多くの試験では治療開始から2年後に評価を行っていたため、治療の長期的な効果についての情報が得られた。

訳注: 

《実施組織》森岡敬一朗 翻訳、杉山伸子 監訳[2020.08.07]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002126.pub4》

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