レビューの論点
ワクチンはかぜの予防になるか?
背景
かぜは、主に上気道のウイルス感染によって引き起こされる。かぜをひいた人は、体調が悪くなり、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みの有無にかかわらず咳をし、体温が少し高くなる。しかし、通常、自己の免疫システムがウイルス感染による影響をコントロールすることで、回復する。かぜに対する治療は、症状を和らげることを目的としている。世界的に見ると、かぜは広く病気を引き起こし、大きな経済的損失をもたらしている。米国では、かぜによる経済的損失は年間400億ドルを上回ると推定され、これには数百万日もの欠勤日数や学校での欠席日数が含まれる。欧州では、1回の発症あたりの総費用は最大1,102ユーロとなる可能性がある。また、不適切な抗菌薬処方による支出も大きい。かぜの原因ウイルスは複数存在するため、予防のためのワクチンを製造することは困難であった。健康な人に対するかぜ予防のためのワクチンの効果はまだ不明である。
検索日
エビデンスは2022年4月26日現在のものである。
研究の特性
今回の更新では新規の試験は見つからなかった。このレビューには、過去に確認されている、1965年に実施されたランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群のうちの1つに無作為に割り当てるタイプの試験)が含まれている。この研究は、米国海軍の訓練施設に所属する若くて健康な軍人2,307人を対象に、弱毒化したアデノウイルスの生ワクチン、不活化4型ワクチン、不活化4型・7型ワクチンの効果をプラセボ(偽ワクチン)と比較して評価したものである。
研究の資金源
含まれる試験は、政府機関の資金援助を受けて行われたものである。
主な結果
かぜの発生頻度については、弱毒化アデノウイルス生ワクチン接種者とプラセボ接種者の間に差はなかった。有害事象については、両群間に差はなかった。しかし、試験参加者が一般人を代表していないこと、試験デザインに欠陥があったことから、この結果に対する信頼度は非常に低い。アデノウイルスワクチンによる健康な人のかぜ予防は、現在のところエビデンスとして支持されていないので、ワクチンでかぜを予防できるかどうかについては、さらなる研究が必要である。
エビデンスの確実性
バイアスのリスクが高いこと、研究対象が若い男性のみであること、研究対象者が少なく、かぜの発症数も少ないことから、エビデンスの確実性は非常に低いと評価した。
《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳 [2023.01.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002190.pub6》