今回の結果から、慢性心不全患者に対するPDIは、プラセボと比較して、死亡率の上昇に関与していることが確認された。現時点の結果は、死亡率の上昇は血管拡張薬の追加によるとする仮説を裏付けていない。従って、心不全患者にはPDIの慢性的な使用を避けるべきである。
慢性心不全の治療において血管拡張薬、ACE阻害薬、ベータ遮断薬は平均余命の延長を明らかにしている。その他にも心筋の変力状態を高める戦略がある。ホスホジエステラーゼ阻害薬(PDI)は、細胞内サイクリックAMPを増加させることによって作用を発揮し、その結果、細胞内カルシウム濃度を上昇させ、陽性変力作用へとつながる。
要約したデータに基づく今回の概要では、症候性の慢性心不全患者を対象にPDI IIIとプラセボを比較しているすべてのランダム化比較試験からのデータをレビューする。主要エンドポイントは全死亡率とした。副次的エンドポイントとして、原因別死亡率、心不全の悪化(介入を必要とする)、心筋梗塞、不整脈、めまいなどを考慮する。血管拡張薬の併用、心不全の重症度、ならびにPDI誘導体および/または分子の種類に基づいて、サブグループで治療効果に一貫性があるか否かについても検討する。今回の概括は、1994年に発表した我々の過去のメタアナリシスを更新するものである。
心不全を対象にPDIとプラセボを比較しているランダム化試験を、MEDLINE(1966年~2004年1月)、EMBASE(1980年~2003年12月)、Cochrane CENTRAL trials(コクラン・ライブラリ2004年第1号)およびMcMaster CVD trials registriesを用いて検索し、国際的な抄録刊行物(「European Heart Journal」、「Journal of the American College of Cardiology」および「Circulation」のジャーナルに過去22年間の間に発表された抄録)を徹底的にハンドサーチして検索した。
追跡期間が3ヵ月を超えるPDIとプラセボとを比較しているすべてのランダム化比較試験。
21件の試験(患者8408例)が本レビューの選択に適格であった。4つの特定のPDI誘導体および8つのPDI分子が検討された。
PDI治療は、プラセボと比較して、死亡率を有意に17%上昇させていた(相対リスク1.17(95%信頼区間1.06~1.30;p<0.001)。さらに、PDIは心臓死、突然死、不整脈、めまいを有意に増加させている。全原因による死亡率を考慮すれば、血管拡張薬の同時使用(または無使用)、心不全の重症度、使用したPDI誘導体や分子にかかわらず、PDIの有害作用は均質であると思われる。