腟カンジダ症の抗真菌薬は、口から飲む(経口)か腟内に入れる(腟内)のでは、どちらの方が効果があるか?

腟カンジダ症とは?

腟カンジダ症は、酵母と呼ばれる真菌の一種によって起こる、よく見られる感染症である。症状としては、腟の周りのかゆみや炎症、白いおりものなどがある。腟カンジダ症は通常は無害であるが、不快な思いをすることがある。

腟カンジダ症は通常、抗真菌薬で治療する。これらの薬は、口から(経口的に)服用したり、腟内に入れたりする。

このコクラン・レビューを行った理由

抗真菌薬を腟内に入れるよりも経口投与した方が腟カンジダ症の治療に効果があるのかどうかを調べたかった。

実施したこと

腟カンジダ症を治療する抗真菌薬について、経口抗真菌薬と腟内抗真菌薬を比較した研究を検索した。

治療が無作為に決定されるランダム化比較試験を検索した。なぜなら、この種の研究は治療の効果に関する最も信頼できるエビデンスを与えてくれるからである。

私たちは、それぞれの抗真菌薬が、どれくらいの効果があり、どれくらい早くカンジダ菌の感染を取り除いたり症状を改善したりできるのか、抗真菌薬による望ましくない影響があるかどうか、女性が経口治療と腟内治療のどちらを好むか、について関心があった。

検索日: 2019年8月29日までに公開されたエビデンスを含めた。

わかったこと

アゾール系と呼ばれる抗真菌薬で治療された腟カンジダ症の女性5007人を含んだ26件の研究を特定した。研究はヨーロッパ、米国、タイ、イラン、日本、ナイジェリアで行われていた。8つのアゾール系が研究対象になっていた。経口剤2種類(フルコナゾール、イトラコナゾール)、腟内剤6種類(ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、セルタコナゾール、テルコナゾール)である。

研究では、経口抗真菌薬と腟内抗真菌薬の効果を以下の基準で測定した。

- 症状がない(臨床的な治癒)。
- 真菌が腟内で見つからない(真菌学的な治癒)。あるいは、
- 女性が治療をやめる原因となった望ましくない影響。

経口抗真菌薬と腟内抗真菌薬の費用を報告した研究はなかった。

レビューの結果

臨床的な治癒(症状なし)は、経口抗真菌薬と腟内抗真菌薬では、短期的(5~15日;13試験)にも長期的(2~12週間;9試験)にも同様であった。抗真菌薬が経口剤でも腟内剤でも、腟カンジダ症の症状を取り除くことにはおそらくほとんど違いがない。

しかし、経口抗真菌薬の方が短期的(19研究)にも長期的(13研究)にも、腟内抗真菌薬よりも腟内の酵母菌を除去できる(真菌学的治癒)可能性が高いと考えられた。

望まない影響を理由に抗真菌薬の使用を中止した女性はわずか3人であった(23研究)。女性が経口または腟内抗真菌薬による治療を中止するリスクは低い。

報告された望ましくない影響の発生数も同様であった。つまり、抗真菌薬が経口剤であろうと腟内剤であろうと、望ましくない影響にはほとんど違いがないかもしれない(13件の研究)。頭痛や消化器症状は経口抗真菌薬の方でよく見られ、腟内抗真菌薬の望ましくない影響は主に腟部に局所的に生じることが多かった。

今回の結果からは、女性は腟内抗真菌薬よりも経口抗真菌薬の服用を好む可能性が示唆された(12件の研究)。

抗真菌薬が経口または腟内であるかどうかでは、治癒までの期間にほとんどあるいは全く差がないかもしれない。

結果の信頼性

腟カンジダ症の臨床的・真菌学的治癒に関する今回の結果は、中程度の信頼性がある。これらの結果は、さらなるエビデンスが得られれば結果が変わるかもしれない。抗真菌薬の望ましくない影響を理由に女性が治療を中止するリスクが低いことは確実性が高く、さらなるエビデンスがあってもこの結果が変わる可能性は低い。

望ましくない影響の発生数やより好まれる治療法はどちらか、症状がどれほど早く良くなるか、についての結果は信頼性がより低い。これらの結果は、さらなるエビデンスが得られれば変化する可能性が高い。

10件の研究は製薬会社からの支援を受けており、このことが研究の設計、実施、報告の方法に影響を与えている可能性がある。いくつかの研究で得られた結果は大きく異なり、報告に一貫性がなかった。また、女性がどちらの治療を受けているかをわかってしまうため、報告された結果に影響を与えた可能性がある。

結論

経口抗真菌薬は、おそらく腟内抗真菌薬よりも腟から酵母((カンジダ菌)を除去することができるが、そう痒が改善するかについてはほとんど差がない。

経口抗真菌薬、腟内抗真菌薬ともに、女性が望まない影響を理由に治療を中止するリスクは低い。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、阪野正大 翻訳[2021.02.28]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002845.pub3》

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