5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)とトリプトファンについて、これらの治療法は成人での単極性うつ病の治療に有効、安全で許容可能な治療であるか調査した。研究者は、5-HTPとトリプトファンをプラセボ(偽薬)と比較し、うつ病の症状が軽減したと報告した。しかし、副作用が生じた(めまい、悪心および下痢)。また、トリプトファンは命を脅かす病状の発生との関連性があると報告された。確固とした意味のある結論を下す前に、有効性と安全性を評価 するにはさらにエビデンスが必要である。それまで、生命を脅かす副作用が認められていない抗うつ剤を用いることのほうがより効果的であるとレビューアは提案する。レビューでは、適切な比較試験でこれらの成分を効果的に試験するために必要な方法を設定する。
多数の研究が試験課題に対処していると考えられるが、信頼性の点で十分な品質のものはほとんどない。得られたエビデンスからは、これらの成分はうつ病の緩和にプラセボと比較し優れている ことが示唆されている。5-HTPとトリプトファンについては、幅広く使用を推奨する前に、有効性と安全性を評価するためさらなる試験が必要である。これらの成分と生命にかかわる恐れのある好酸球増多‐筋痛症候群との間で考えられる関連性が解明されていない。有効で安全であることが示されている他の抗うつ剤が存在することから、5-HTPとトリプトファンの臨床での有用性は現在のところ限定的である.
5ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)やトリプトファンによる治療は、従来用いられてきた抗うつ剤の自然代替療法と一般的に呼ばれ、単極性うつ病および気分変調の治療に用いられている。
成人を対象に、5-HTPおよびトリプトファンはプラセボと比較し効果的で、また抑うつ障害の治療に安全であるか確認する。
2008年2月12日 に CCDANCTR-StudiesおよびCCDANCTR-References)を検索した。参考文献一覧、書籍の章および学会議事を検索した未公開の試験の場合、専門家および試験実施者に連絡をとった。
ランダム化試験で、単極性うつ病患者または気分変調患者を組み入れ、5-HTPまたはトリプトファン製剤をプラセボと比較し、うつ症状評価尺度による臨床転帰に関する記述がある試験を対象とした。
データについては、3名のレビューアがそれぞれデータ収集フォームへ抽出した。選択基準を関連性があると考えられるすべての研究にそれぞれ適用し、各研究の一致係数(Kappa)を算出した。不一致については合意形成により解消した。試験の品質はバイアスリスクに従って評価した。対象の試験数が少ないことから、5-HTPとトリプトファンの解析を組み合わせた。
特定の検索方式用いて、2001年に108件の試験を検出した。2004年に検索方式を繰り返した結果、新たに3件の試験が検出された。これらの検索で確認した試験のうち、選択基準を満たす品質の十分な試験は合計64名の患者を対象とした試験2件のみであった。得られたエビデンスから、これらの成分はうつ病の緩和にプラセボと比較して優れている(Petoオッズ比:4.10、95%信頼区間:1.28~13.15、RD:0.36、NNT:2.78)ことを示唆している。しかし、これらのエビデンスは結論を導くには不十分な品質であった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.17]
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