早産児の短期の死亡率を低下させるためのセレン補充

高用量のセレン補充は、早産児のある種の合併症を減らす可能性があるが、さらなる研究が必要である。セレンは、栄養素から得られる必須微量元素である。乳児は母親よりも血液中のセレン濃度が低い状態で生まれる。超早産児では、セレン濃度の低下が合併症のリスクを増加させる。本レビューは、早産児にセレン補充を行った試験に関するものであり、セレン補充が敗血症(血液感染症)を減少させることがわかった。他の合併症の減少や生存率の増加は示されていない。有害作用は報告されなかった。従来よりも高用量のセレン補充は有益な可能性があるが、大部分のエビデンスがセレン濃度が非常に低い国のものであるため、より多くの研究が必要である。

著者の結論: 

超早産児に対するセレン補充では、1回以上の敗血症エピソードの減少において利益が認められる。補充は、生存率の改善や、新生児の慢性肺疾患と未熟児網膜症の減少には関連しなかった。非経口栄養において、乳児に対するセレンの補充量は現在の推奨量よりも高用量のほうが有益な可能性がある。データは、セレン濃度が低い国における1件の大規模試験に偏っており、他の母集団に容易に置き換えることはできない。

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背景: 

セレンは必須微量元素で、グルタチオンペルオキシダーゼなど多くのセレノプロテインの成分であり、酸化的損傷を防ぐ役割を果たす。また、セレンは免疫能にも関与することが知られている。新生児の血中セレン濃度は母親よりも低く、早産児ではさらに低い。実験動物では、セレン濃度が低いと、酸化的肺障害に対する感受性が高まるとみられる。超早産児では、セレン濃度の低下が新生児の慢性肺疾患や未熟児網膜症のリスクを増加させる。

目的: 

早産児や極低出生体重(VLBW)児に対するセレン補充の利益と有害性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、コクラン・ライブラリ、2003年第2号)、MEDLINE(1966年~2003年5月)、Embase(1980年~2003年5月)を検索した。また、最近の試験の文献リストを検索し、1990年以降のSociety for Pediatric Researchのアブストラクトを手作業で検索した。この検索は2010年11月に更新した。

選択基準: 

早産児またはVLBW児の出生直後から行ったセレンの非経口または経腸補充と、プラセボまたは非補充を比較し、臨床アウトカムを報告したランダム化比較試験について、本レビューで検討した。

データ収集と分析: 

Cochrane Neonatal Review Groupの基準に基づいて、データの収集と解析を実施した。

主な結果: 

3件の適格な試験を同定した。1件の試験のサンプル・サイズは他の2件の統合よりもはるかに大きく、その大規模試験を含む2件の試験は、母集団におけるセレン濃度が低い地域のものであった。プールしたデータのメタアナリシスでは、セレン補充群において、1回以上の敗血症エピソードを有する乳児の割合に有意な低下がみられた [要約:RR 0.73(0.57 ~ 0.93)、RD -0.10(-0.17 ~ -0.02)、NNT 10(5.9 ~ 50)] 。セレン補充は、生存率の改善や、新生児の慢性肺疾患と未熟児網膜症の減少には関連しなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.17]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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