喘息に対するセレン補充

セレンは微量金属元素であるが、セレンの欠乏は喘息の発症の一因となることもあると考えられている。一部の研究では、慢性喘息の患者へのセレン補充が症状の改善に役立つということが示唆されている。このレビューは、セレン補充が慢性喘息の症状を軽減するのに役立つ可能性があるという、ただ一つの小規模試験からのいくつかのエビデンスを確認したが、それを確実なものとするためには更なる研究が必要とさる。

著者の結論: 

セレンの補充が慢性喘息患者の有用な補助薬になる可能性を示唆するエビデンスがいくつかある。ただ、試験が不十分であり、また肺機能の臨床パラメーターで改善が証明されなかったため、この結論は限定的である。

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背景: 

セレン欠乏症は慢性喘息で重要な意味を持つ可能性がある。観察研究では慢性喘息患者が対照よりセレンレベルが低いことが証明されている。しかし、セレン補充は喘息の薬物療法で奨励されていない。本レビューは慢性喘息におけるセレン補充の役割を評価したRCTをシステマティックに調べる。

目的: 

慢性喘息がセレン欠損と関連する可能性があることから、セレン補充が慢性喘息の症状を軽減し、影響を与えるかが調べられた。本レビューでは慢性喘息の治療で補助薬としてセレンを補充した時の効果を評価した。

検索戦略: 

Cochrane Airways Group trials register、MEDLINE/PUB MED、およびEMBASEを検索した。最新の検索は2005年8月に行った。

選択基準: 

喘息薬とセレン補充の併用と喘息薬単独を慢性喘息患者で比較したランダム化試験。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが試験の参加基準を適用した。

主な結果: 

慢性喘息患者24名が参加した1件の試験を対象とした。この試験で、セレン補充群はプラセボ群と比べて、"臨床評価"の観点から臨床的に有意な改善が報告された。しかし、この改善は肺機能と気道過剰反応とは異なる主観的パラメーターの有意な変化であったため、有効といえなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.29]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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