新生児における、従量式人工呼吸と従来の従圧式人工呼吸との比較

レビューの論点 新生児の人工呼吸管理において、換気量を設定する従量式人工呼吸は、吸気圧を設定した従圧式人工呼吸と比較して、死亡率あるいは肺損傷率 (またはその両方) を低下させるのか。

背景早産児は、補助呼吸を必要とすることがある。新生児の肺疾患は、未熟さが増す(より早く出生する)ことでそのリスクが高くなる。児によっては、人工呼吸器 (呼吸を管理する機器) の補助により救命が可能なことがある。しかしながら、人工呼吸器は新生児の未熟な肺を傷つける危険もある。従来、新生児の人工呼吸器は吸気圧によって肺に送り込む空気の量を決める従圧式モードで使用されてきた。換気ごとの肺に入る空気の量を制御することで肺損傷を減らすことを目指した、新しい従量式の呼吸器モードが開発されてきた。

研究の特性2017 年 1 月に更新された検索で、著者らはレビューに組み入れる 20の 研究を特定した。16の研究(対象となった新生児977人)では、従量式人工呼吸で治療された新生児と従圧式人工呼吸で治療された新生児群の2群を比較していた。4 つの研究 (対象新生児84人) では、新生児はクロスオーバーデザイン(まず、どちらかのモードで、続いて他方に変更して人工呼吸を受ける)で両方の人工呼吸モードで治療された。ほとんどの研究では、エビデンスの質は中程度から低度であり、治療者が盲検化された研究はなかった。このレビューの最も重要な結果は、584~771人の新生児を対象とした8~ 12研究によるデータに基づいていた。

主な結果従量式モードで人工呼吸を行った新生児は、肺の損傷を来さない可能性が高かった。また、呼吸補助を必要とする期間が短く、気胸(肺から胸腔に空気が漏れ出る状態)を起こす可能性も低かった。血中二酸化炭素濃度もより安定し、超音波検査で認める脳の異常も頻度が低かった。一方、従量式人工呼吸が従来の従圧式モードと比較して、新生児に危害が及ぶ可能性が高いという証拠は認められなかった。どのような従量式人工呼吸が、運動や知能の発達の改善をもたらすかについては、さらなる研究が必要である。また、従量式人工呼吸の異なる技術を比較するためにも、多くの研究を要する。

エビデンスの質盲検化されている研究がないため、エビデンスの質は低~中程度である。いくつかの研究では研究デザインに問題点があった。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、増澤祐子 翻訳[2018.05.23(監訳終了日)] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003666.pub4》

Tools
Information