リウマチ性関節炎に対する鍼および電気鍼治療

鍼治療はリウマチ性関節炎の治療として有効であるか。

試験の質が低~中等度の2件の研究をレビューし、現在可能な範囲のベストエビデンスを提示する。それらの研究では、リウマチ性関節炎の患者84例をテストした。また鍼治療とプラセボ(偽治療)またはステロイド注射とを比較した。1週間に1回1回治療後、または5回治療後に改善を測定した。

肩こりの原因は何か。鍼治療は肩こりに効くのか。リウマチ性関節炎(RA)は、免疫システムが自分の体の器官を攻撃する疾患である。この攻撃は主に手や足の関節で起こり、関節の周辺が赤くなり痛みを伴い発熱する。痛みおよび/または腫れを和らげるために薬剤を使用する治療や使用しない治療を行う。

鍼治療は薬剤を使わない治療で身体の特定の部位に細い針を挿す。鍼治療により痛みを和らげる化学物質が体内に分泌されたり、神経の痛みの伝達を遮断したり、身体のエネルギー(気)や血液が体内を滞りなく流れるようになると考えられている。鍼治療が効くのかまたは安全なのかは不明である。

研究によって判明したこと。1件の研究では、患者は週に1回5週間鍼治療または偽治療を受けた。痛み、腫脹関節数、圧痛関節数、疾患活動性、全身の健康度、試験結果または必要であった鎮痛剤の量は、鍼治療または偽治療の実施を問わず変化が認められなかった。

もう1件の別の研究では、膝の特定部位または実際の鍼治療の部位にまたは偽の部位に針を挿し電気を流した。実際に鍼治療を受けた患者で、休息時、活動時または直立時膝の痛みがより緩和した。改善効果は、鍼治療後から4カ月まで持続した。残念ながら本レビューのレビュー著者は、この試験の質は低くまた鍼治療の効果を過大評価していると考えている。

鍼治療は安全であるか。これらの研究では副作用は評価されていなかった。

最終的な結論。本研究におけるエビデンスの質は「シルバー」である。

エビデンスが非常に少ないので、鍼治療はリウマチ性関節炎の症状を改善するとは言えない。

著者の結論: 

電気鍼治療の研究結果で治療後24時間および4カ月でRA患者の膝痛の緩和に電気鍼治療が有効である可能性があることが示されたが、試験の質が低くサンプルサイズも小さいのでレビュー著者は推奨はできないと結論付けた。さらにレビュー著者は、ESR、CRP、疼痛、患者の全体的評価、腫脹関節数、圧痛関節数、全体的な健康度、疾患活動性および鎮痛剤の減少には鍼治療は効果がないとしている。これらの結論には、鍼の種類(鍼か電気鍼か)、介入の部位、臨床試験数が少ないことおよび対象とした試験のサンプルサイズが小さいことなどの試験方法を考慮すると限界がある。

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背景: 

鍼治療はリウマチ性関節炎(RA)の対症療法に対する補助療法としてリハビリテーションの専門家によって用いられている。鍼治療は伝統的な中国医療であり、細い針を身体のエネルギーが集中していると信じられている特定の決まった点に挿す。場合によっては少量の電流を針に流すことがある。適切な点に針が挿されるとモルヒネ様物質であるエンドルフィンが患者の体内に分泌され、部分的または全身に鎮痛作用(疼痛緩和)を及ぼす。 本レビューは2002年7月に出版された元のレビューをアップデートしたものである。

目的: 

RA患者の疾患活動性の客観的または主観的尺度における鍼または電気鍼治療の効果を評価すること

検索戦略: 

主に2001年9月に実施したMEDLINE、EMBASE、 PEDro、 Current Contents、Sports Discus および CINAHLの包括的な検索を2005年5月にアップデートした。Cochrane Field of Rehabilitation and Related TherapiesおよびCochrane Musculoskeletal Review Groupにも専門レジストリの検索について問い合わせた。すべての検索論文にハンドサーチを実施し、その専門家に追加研究を特定するため連絡を取った。

選択基準: 

RA患者を対象としたランダム化比較試験および比較臨床試験などの比較対照試験を対象とした。英語とフランス語以外の言語で出版された試験は、分析対象外とした。レビュー著者からさらなるデータを得られなかったものはアブストラクトを除外した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアがそれぞれに文献検索から可能性のある文献を特定し、定義済抽出フォームを用いデータを抽出した。すべての抽出したデータに関して意見の一致を得た。試験の質は2名のレビューアが5点有効法を用い、ランダム化、二重盲検および試験中止の記述を評価した。

主な結果: 

アップデートのための検索を実施した後、さらに5件の可能性のある文献を特定したが、これらは試験の選択基準を満たさなかった。全84例の2件の試験を対象とした。1件では鍼治療を、もう1件では電気鍼治療を使用していた。鍼治療では赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク(CRP)、患者の全体的評価に対する視覚的アナログ尺度(VAS G)、腫脹関節数および圧痛関節数、一般的な健康に関する質問紙法(GHQ)、疾患活動性スケール(修正版)(DAS) または鎮痛剤の服用減少において各群間で統計的に有意な差は認められなかった。統計的に有意ではないが、プラセボ群では改善がなかったのに対して治療群の疼痛は0-100mm視覚的アナログ尺度において4ポイント改善した。2件目の試験では電気鍼治療を用いており、プラセボ群と比較して治療後24時間で治療群において有意な膝痛の緩和が報告された(WMD: -2.0、 95% CI -3.6,-4.0)。治療後4カ月でも有意な緩和が見られた(WMD -0.2、95% CI: -0.36, -0.04)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.19]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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