過体重または肥満は世界中でよく見られる健康状態だが、有効な治療法はわずかである。キトサンは、体重減少および血中コレステロール値の低下をうたっている広く市販されている栄養補助食品である。総計1219名の参加者を含む4週から24週間継続された15件の研究が解析された。現在までのキトサンの試験は、質という点ではかなりばらつきがあった。レビューでは、キトサンが体重に与え得る影響はわずかであると示唆されているが、質の高い試験から得られた結果ではこの影響が最小である可能性があることが確認された。
過体重および肥満の短期治療には、キトサンがプラセボより有効であることを示すエビデンスがいくつか存在する。しかし、これまでの多くの試験は質が不良で、結果にばらつきがある。質の高い試験から得られた結果によれば、体重に対するキトサンの効果はわずかであり、臨床的に意味のあるものである可能性は低い。
キチンの脱アセチル化体であるキトサンは、体重を減少させるとの報告がある栄養補助食品である。処方箋の必要がなく、広く世界中の店頭で購入可能であり、多くの試験で評価されているものの、有効性については未だに議論がある。
過体重および肥満の治療薬としてのキトサンの効果を評価すること。
電子データベース(MEDLINE、EMBASE、BIOSIS、CINAHL、コクラン・ライブラリ)、専門分野のウェブサイト(Controlled Trials、IBIDS、SIGLE、Reuter's Health Service、Natural Alternatives International、Pharmanutrients)、関連性のある雑誌論文の参照文献リストを検索し、関連性のある著者およびメーカーに問い合わせた。
過体重または肥満の成人を対象に4週間以上の試験期間でキトサンを検討していたランダム化比較試験を本レビューに組み入れた。必要に応じて、組み入れた研究の著者に追加情報について問い合わせた。
標準化したデータ抽出書式を用いて、2名のレビューアが独立して適格試験から詳細を抽出した。データ抽出の相違点は、合意に達することで解決した。連続データは、重み付け平均差および標準偏差で表した。分散逆数重み付け法(Inverse variance weighted method)を用いて、統合した効果サイズを算出した。
総数1,219名の参加者を対象とした15件の試験が選択基準に適合した。これまでのところ、死亡率および罹病率に対するキトサンの効果を測定した試験はない。試験をすべて含めた解析から、キトサン製品はプラセボに比べ、体重を有意に減少させ(重み付け平均差-1.7kg;95%信頼区間(CI)-2.1~-1.3 kg;P<0.00001)、総コレステロール値を低下させ(-0.2mmol/L;95%CI-0.3~-0.1;P<0.00001)、収縮期血圧および拡張期血圧を低下させた。有害事象の頻度および糞便中の脂肪排泄量については、介入群と対照群で明瞭な差がみられなかった。ただし、多くの研究の品質は至適とは言えず、割りつけのコンシールメント(隠蔽化)の基準に適合した研究、大規模試験または試験期間が長い試験に限定して行った解析からは、このような試験では体重および総コレステロール値の低下がかなり小さいことが示された。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.29]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。