子癇前症は、高血圧および尿中蛋白質量が高い女性で、妊娠中に生じる可能性がある。場合によっては、乳児および早産児での発育不良に至る可能性がある。また女性では重症な合併症が生じる場合もあり、肝臓、腎臓、脳または血液凝固系に影響する場合もある。母親・乳児のいずれでも死亡率のリスクがある。子癇前症の発症で考えられる要因の1つとして、「フリーラジカル」と呼ばれる化学物質が過剰量で存在する可能性があげられる。ビタミンC、ビタミンE、セレンおよびリコピンなどの抗酸化剤により、フリーラジカルが中和される可能性がある。このレビューでは女性6533名が参加した10件の試験を対象とし、複数の抗酸化剤について調査した。全体的に、抗酸化剤を補充しても、子癇前症、高血圧、早産の減少は認められなかったことが、このレビューで明らかとなった。抗酸化剤を別途評価した場合、ビタミンCおよびEを除き有効性の有無について明確にするためのデータが十分ではなかった。妊娠中の子癇前症やその他合併症のリスクを低減するために、抗酸化剤を使用することは、現在得られているエビデンスでは支持されていないが、現在も実施中の試験はある。
このレビューで得られたエビデンスは、妊娠中の定期的な抗酸化剤の補充により、妊娠中の子癇前症および重症なその他の合併症のリスクが低減することを裏付けるものではない。
酸化ストレスは子癇前症の発症に関与する主な要因として認識されてきている。妊娠中の女性に対する抗酸化剤の補充は、酸化ストレスへの対抗に役立ち、それにより子癇前症の発症を予防するまたは遅延させる可能性がある。
妊娠中の抗酸化剤の補充による有効性および安全性並びに子癇前症発症リスクと関連する合併症を評価すること。
Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register(2007年5月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(コクラン・ライブラリ2006年第3号)、Medline(1950年~2007年10月)およびCurrent Contents(1998年~2004年8月)を検索した。
妊娠中の子癇前症の予防を目的として、抗酸化剤1剤以上とプラセボ、抗酸化剤の投与なしのいずれかを比較するすべてのランダム化試験、また抗酸化剤1剤以上とその他1種類以上の介入併用とを比較する試験。
2名のレビューアが対象試験の選考、試験の品質を別個に評価し、またデータを抽出した。
女性6533名が参加した10件の試験をこのレビューの対象とし、5件の試験は高品質と評価された。大多数の研究では、評価した抗酸化剤はビタミンCおよびEの併用療法であった。相対リスク比(RR)については、子癇前症(RR:0.73、95%信頼区間(CI):0.51~1.06、9件の研究、女性5446名)、またはその他主要アウトカム:重篤な子癇前症(RR:1.25、95% CI:0.89~1.76、2件の研究、女性2495名)、早産(37週前)(RR:1.10、95% CI:0.99~1.22、5件の研究、女性5198名)、妊娠齢に比較して低体重児(RR:0.83、95% CI:0.62~1.11、5件の研究、新生児5271名)または新生児の死亡(RR:1.12、95% CI:0.81~1.53、4件の研究、新生児5144名)について、抗酸化剤補充群と対照群で有意差は認められなかった。抗酸化剤補充群に割付けられた女性では、妊娠後期に腹部痛の自発的報告件数が多く(RR:1.61、95% CI:1.11~2.34、1件の試験、女性1745名)、降圧剤療法が必要(RR:1.77、95% CI:1.22~2.57、2件の研究、女性4272名)、また高血圧のため出産前入院が必要となった(RR:1.54、95% CI:1.00~2.39、1件の試験、女性1877名)。しかし、後者の2つの結果については、その他高血圧の合併症の増加に明確には反映されていなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.3]
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