肺動脈性肺高血圧症に対するエンドセリン受容体拮抗薬

レビューの論点

エンドセリン受容体拮抗薬は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者において、どの程度運動量(運動能力)を増やすか、症状を改善するか、死亡を減らすか?

背景

肺動脈性肺高血圧症は、肺血管抵抗の増大により右心不全を引き起こし、最終的には死に至る恐ろしい病気です。

エンドセリン受容体拮抗薬は、『血管平滑筋』細胞分裂を停止させることができる強力な血管拡張薬(血管を開く(拡張する)薬)の一種で、拡張して肺動脈の構造変化を好転させることが可能である。

研究の特徴

我々は、ランダム化試験(無作為に2つ以上の治療群のいずれかに割り付けた試験)のエビデンスを検討した。医学文献の徹底的な検索と評価の結果、レビューに含めるべき17件の研究、計3,322人が参加した研究を特定した。参加者の大多数は、原因不明のPAH(特発性)であった。エビデンスは2020年11月までのものである。

主な結果

エンドセリン受容体拮抗薬は、おそらく運動能力を高め、世界保健機関(WHO)の機能分類(肺高血圧症患者症状の重さの程度を測るもの)を改善し、PAH患者の死亡率や症状を改善するかもしれない。しかし、まれであるが肝障害のリスクを高める可能性もある。エンドセリン受容体拮抗薬のPAHに対する効果についての疑問は、現在、ほぼ解決されたと思われる。

エビデンスの確実性

全体として、欠測データが多いため、提示されたエビデンスの確実性は中等度である。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、星進悦 翻訳[2022.03.28]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004434.pub6》

Tools
Information