安定性狭心症の治療に伝統的な漢方製剤(TCHP)の効果を示す強固なエビデンスが認められなかった

伝統的漢方製剤(TCHP)は、狭心症患者の治療に用いることが多い。しかし、TCHPが有効であることを示す十分なエビデンスがない。本レビューのレビューアたちは、狭心症がある患者に対するTCHPの潜在的な利益と安全性についてシステマティック・レビューに着手した。計216例の患者による3件のランダム化比較試験を同定した。狭心症の症状を改善するのに、硝酸薬と比較してTCHPを用いる利益が認められたのは、1件の小規模な試験だけだった。残りの2件の試験は結論に至らなかった。選択した研究数および研究の参加者数とも非常に少なかったため、TCHPは慎重に使用するべきである。狭心症の治療に対して、特定のTCHPの有効性および安全性のエビデンスを強化するには、より大規模で質の高いTCHPのランダム化比較試験が必要であると提言する。

著者の結論: 

選択した研究と参加者の数が少ないため、今回のレビューで対象としたTCHPによる狭心症治療に対する有効性について、現在はエビデンスが不十分である。したがって、TCHPは慎重に使用するべきである。狭心症に対する漢方薬の有効性と安全性のエビデンスを強化するには、類似した介入による質の高いランダム化試験が必要である。

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背景: 

安定狭心症は、世界的に一般的な病態である。中国では、安定狭心症の治療に伝統的漢方製剤(TCHP)が開発されている。

目的: 

狭心症の患者に対するTCHPの有効性と安全性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (「コクラン・ライブラリ2006年第4号」)、 MEDLINE(1995~2008年6月)、EMBASE(1995~2008年6月)、Chinese Biomedical Database (CBM) (1995~2008年6月)、Chinese Science and Technique Journals Database (VIP) (1994~2008年6月)およびChinese National Knowledge Infrastructure (CNKI) (1995~2008年6月)を検索した。関連する中国の雑誌をハンドサーチした。さらに詳しい情報を得るため、本レビューで評価した研究分野の研究者および研究著者にも連絡を取った。言語の制限は設けなかった。

選択基準: 

プラセボ、その他のさまざまなTCHP、または狭心症に現在一般的に使用されているその他療法を対象にTCHPと比較するランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名の著者が独立して研究の質を評価した。1名の著者がデータを抽出し、もう1名の著者がチェックした。

主な結果: 

本レビューでは、それぞれ60~80例、計216例の参加者による3件の研究を選択した。選択した研究で用いた介入は、それぞれ異なっていた。1件の研究ではTCHPと硝酸薬を比較しており、方法論の質も優れていた。一方、残りの2件の試験ではTCHP製剤を別のTCHP製剤と比較していた。1件の試験では方法論の質が低かった。したがって、メタアナリシスで要約できなかった。少数の患者を対象とした1件の試験のみが、狭心症症状を改善するのに硝酸薬と比較してTCHP療法を支持する肯定的な結果を示した。2件の試験では、有害作用が生じたことが記述されていたが、詳しいデータは得られなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.30]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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