クロストリジウム-ディフィシル(C. difficile)は、腸管に付着する細菌で、関連性のない疾患で抗菌薬療法を受けた患者に対して重篤な下痢またはまれに死亡に至る原因となる。抗菌薬は腸管において「良性で」保護の役割を果たす細菌を抹消してしまう傾向にあるためC. difficileのコロニー化が生じる。プロバイオティクスは、腸管の保護の役割を果たす細菌に類似しており、C. difficile感染症を治療する複数の研究で使用されてきた細菌および酵母である。残念ながら、これらの小規模の研究からはC. difficile感染症の治療でプロバイオティクスの使用を支持する十分なエビデンスは得られていない。
C. difficile大腸炎の治療を目的として、プロバイオティクス療法を抗菌薬療法の補助として推奨する十分なエビデンスがない。C. difficile大腸炎の治療にプロバイオティクスを単独で使用することを裏付けるエビデンスは得られていない。
プロバイオティクスは、クロストリジウム-ディフィシル(C. difficile)感染症で変化した胃腸管内の細菌環境の均衡を修復すると考えられる非病原性の酵母菌および細菌で構成される生菌製品である。
C. difficile大腸炎に関連した抗菌薬の投与におけるプロバイオティクスの有効性を評価する。
MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびCochrane IBD/FBD Specialized Trials registerなどのデータベースを検索し、1966年~2007年に出版された報告書すべてを確認した。
C. difficile大腸炎が確認された患者の治療を目的にプロバイオティクスの単独療法または従来の抗生物との併用療法を用いた前向きのランダム化研究を選定対象とした。
2名の著者がそれぞれにデータ抽出および解析を実施した。
4件の試験は選択基準を満たしたためレビュー対象とした。成人でのC. difficile大腸炎の再発または初発エピソードの治療を目的として、従来の抗菌薬(バンコマイシンまたはメトロニダゾール)とプロバイオティクスの併用について、4件の試験を調査した。研究は小規模であり、また実施方法に問題が認められた。1件の研究から、プロバイオティクスと抗菌薬との併用により統計学的に有意な有効性が明らかとなった。McFarlandは1994年に、S. boulardii投与患者ではプラセボ投与患者と比較しC. difficileによる下痢の再発が有意に低いことを明らかにした(RR:0.59、95% CI:0.35~0.98)。その他の研究では、プロバイオティクスの治療による有効性は明らかとなっていない。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.3]
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