妊娠37週より前に子宮収縮なく破水した場合、すぐに児を出産するか、陣痛が始まるのを待つか、どちらが児のためにより良いのか?

論点

妊娠37週未満で子宮収縮を伴わず破水した場合の管理方法には、すぐに児を分娩するか、自然な陣痛発来を待つかの2つの選択肢がある。両方の選択肢のリスクとベネフィットを慎重に考える必要がある。

重要である理由

正期産域前の出生では、呼吸障害や新生児集中治療室の長期滞在など未熟性に関する障害の機会が増加しうる。しかし、子宮内にとどまることは、深刻な健康問題や死につながりうる、母児の感染症を生じるかもしれない。このレビューの目的は、どちらが最良の選択肢かを調べることである。

どのようなエビデンスが得られたか?

早期前期破水の女性3617人を含む12試験を対象とした。女性は早期出産または、待機的管理(分娩を待つ)のいずれかにランダムに振り分けられた。女性は妊娠25以降、37週未満であった。研究は1977年~2013年に16カ国で行われた。全体として、12件の研究では、バイアスのリスクが低いか不明であると評価され、エビデンスの質は中程度から高度だった。

新生児の感染や出生前の児の死亡率に2群間に差はなかった。しかし、早期出生では、新生児が呼吸するために余分な助けを必要とし、呼吸障害だけでなく出産後の新生児死亡リスクが増加した。早期計画分娩群の児は待機的管理群の児に比べ、新生児集中治療に入院することが多く、より早期に出生した。早期分娩では、帝王切開率、分娩誘発率や子宮内膜の感染リスクは増加したが、羊膜の感染リスクは減少した。待機的管理群となった女性の入院期間はより長かった。

意味するもの

児がすぐに出生すべき理由がない場合に、妊娠37週未満で破水した女性が自然な陣痛発来を待機することは、より健康的なアウトカムを求めるために最良の選択肢である。

著者の結論: 

このアップデートレビューには、5件のランダム化比較試験(2927人)を追加したが、妊娠37週未満のPPROMの女性における早期分娩と待機的管理の比較において、新生児敗血症の発生に臨床的に重要な違いはなかった。早期計画分娩では、新生児RDSの発生、人工換気の必要性、新生児死亡、子宮内膜炎、新生児集中治療室への入室、帝王切開での分娩率の上昇がみられたが、絨毛膜羊膜炎の発生は減少していた。早期分娩群に無作為に割付けられた女性は、分娩誘発のリスクが上昇したが、入院期間は減少していた。早期分娩に無作為に割り付けた女性の児は、より短い在胎期間で出生しやすかった。

妊娠継続が禁忌でない妊娠37週未満のPPROMにおいて、注意深いモニタリングによる待機的管理の方針は、母児のよりよいアウトカムと関連していた。

今後の研究の方向性として、どちらのグループのPPROMの女性も、待機的管理による利益を得ないよう測定することを目的とすべきである。これは、入院時妊娠週数、コルチコステロイドの投与、および異常な腟微生物細菌叢に関するサブグループ解析によって測定できる。研究はまた、児の長期的な神経発達を評価する必要がある。

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背景: 

早産前期破水(PPROM)の管理は、PPROM後すぐに分娩を開始させる場合も、経過観察(待機的管理)する場合もある。どちらの方法が母児にとって最も有益であるのかは不明である。ここでは2010年に発表されたコクランレビュー(Buchanan 2010)をアップデートした。

目的: 

胎児、新生児、母体の健康を目的として、妊娠24週以降、37週未満に早期前期破水した女性に対する、計画的早期分娩と待機的管理を比較し、その効果を評価する。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register(2016年9月30日)および検索した研究の文献リストを調べた。

選択基準: 

妊娠37週未満におけるPPROMの女性を対象に、待機管理と早期分娩を比較しているランダム化比較試験。準ランダム化試験を除外した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが独立して本レビューへ組み込む試験の選択を行い、また方法論の質を評価した。2名のレビューアが独立してデータを抽出した。それぞれのデータの精度が確認された。GRADEアプローチを用いてエビデンスの質を評価した。

主な結果: 

本レビューでは12件の研究(女性3617人と児3628人)を対象とした。プライマリーアウトカムである、新生児敗血症(リスク比(RR)0.93、95%信頼区間(CI)0.66〜1.30、12件の試験、児3628人、中等度のエビデンス)、血液培養陽性の新生児感染(RR 1.24、95%CI 0.70~2.21、7件の試験、児2925人)について早期分娩と期待的管理に明確な差はなかった。しかし、早期分娩は呼吸窮迫症候群(RDS)の発生率が増加した(RR 1.26、95%CI 1.05~1.53、12件の試験、児3622人、高度のエビデンス)。早期分娩はまた、帝王切開率の増加と関連していた(RR 1.26、95%CI 1.11~1.44、12件の試験、児3620人、高度のエビデンス)。

早期分娩と待機的管理を比較した場合、セカンダリー周産期アウトカムである、総周産期死亡率(RR 1.76、95%CI 0.89~3.50、11件の試験、児3319人)、子宮内死亡(RR 0.45、95%CI 0.13~1.57)に差はなかった。しかし、早期分娩は新生児死亡率の上昇(RR 2.55、95%CI 1.17~5.56、11件の試験、児3316人)、換気の必要性(RR 1.27、95%CI 1.02~1.58、7件の試験、児2895人、高度のエビデンス)と関連していた。早期分娩に無作為に割り付けられた女性の児は、待機的管理に無作為に割り付けた女性の児よりも、早い在胎週数で出生していた(平均差(MD)-0.48週、95%CI -0.57~-0.39、8件の試験、児3139人)。新生児集中治療室への入室は、早期分娩の児に多くみられた(RR 1.16、95%CI 1.08~1.24、4件の試験、児2691人、中等度のエビデンス)。

母体に関するセカンダリーアウトカムの評価では、早期分娩は絨毛羊膜炎の減少(RR 0.50、95%CI 0.26~0.95、8件の試験、女性1358人、中等度のエビデンス)、子宮内膜炎の増加(RR 1.61 、95%CI 1.00~2.59、7件の試験、女性2980人)と関連していたことが分かった。介入の必要性に関して、早期分娩に無作為に割り付けられた女性は、分娩誘発をより多く実施されていた(RR 2.18、95%CI 2.01~2.36、4件の試験、女性2691人)。早期分娩に無作為に割り付けられた女性は、入院期間がより短かかった(MD -1.75日、95%CI -2.45~-1.05、6件の試験、女性2848人、中等度のエビデンス)。

サブグループ解析では、妊娠34週以降の待機的管理により、特にRDSや母体感染に関しての母体と新生児のアウトカムの向上がみられた。予防的抗生剤の使用は、待機的管理に無作為に割り付けられた女性で母体感染の減少に有効であることが示された。

総合的に、12件の試験全てのバイアスのリスクは低いもしくは不明と評価された。方法論の十分な説明がなかったいくつかの研究は、バイアスのリスクは不明とした。5件の研究に、バイアスのリスクが高いと評価された1つもしくは2つの領域があった。GRADEプロファイルでは、すべての重要なアウトカムに渡って、エビデンスの質は、中程度〜高度と示された。

訳注: 

《実施組織》増澤祐子翻訳、重見大介監訳[2017.5.5]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD004735》

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