クローン病は腸の慢性炎症を生じる。一般的にみられる症状は腹部痛および下痢である。プロバイオティクスは生菌製品であり、腸内細菌の増殖および活性度を変化させ炎症を低減させるにより健康に寄与すると考えられている。7件のさまざまな品質の小規模研究をレビューした。この研究では、寛解中のクローン病患者を対象に、維持療法とプロバイオティクス(例:Lactobacilli GG、Escherichia coli strain Nissle 1917、VSL#3、Saccharomyces boulardii)の併用療法の効果を試験した。寛解を内科的または外科的治療により誘発した。この研究は、6カ月間~1年間継続した。この研究では、プロバイオティクス投与による有効性は示されなかった。プロバイオティクスは全体的に忍容性が良好であり、またほとんど副作用は報告されなかった。報告された副作用には、膨満感、下痢、便秘、嘔気および上腹部痛などがあった。現在、クローン病の維持療法に対してプロバイオティクスの使用を支持するエビデンスは得られていない。規模の大きい研究でプロバイオティクスとの併用療法が治療に有効であることが示される可能性はある。
プロバイオティクスがCDでの寛解維持に有用であることを示唆するエビデンスは得られていない。対象とした研究はすべて少数の患者を組み入れた研究であったことから、有意差が存在したとしても、統計学的な検出力が十分ではなかった可能性がある。クローン病に対するプロバイオティクスの有効性を評価するためには、より規模の大きい試験が必要である。
クローン病(CD)は活動期と症状がない寛解期を繰り返す疾患である。プロバイオティクスは健康への有益性が期待できる微生物であり、CD患者では疾患再発予防の代替手段として評価されてきている。
CDでの寛解維持に対するプロバイオティクスの有効性を評価する。
Cochrane Database of Systematic Reviews (2005年、第3号)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(2005年、第3号)、Cochrane IBD/FBD Group Trials Register (2005年)、MEDLINE (1966年~2005年)、EMBASE (1980年~2005年)、ISI Web of Knowledge (BIDS) 1981年~2005年、 On-line clinical trials databases (2005年)、およびレビュー記事を検索した。未発表のデータについては、その分野での専門家に問い合わせた。
プロバイオティクス療法のランダム化比較試験
2名のレビューアがデータ抽出および試験方法の品質の評価を実施した。主要アウトカムは維持療法後の再発の相対リスク比(RR)(および95%信頼区間 [CI])とした。
7件の小規模の研究が確認され、試験されたプロバイオティクス、試験方法の品質および投与計画により異なっていた。統計解析に統合した研究はなかった。
CDの再発リスク軽減に対するE. coli Nissleの有効性について、プラセボ(RR:0.43、95% CI:0.15~1.20)、またはLactobacillus GGの外科的誘発による寛解後(RR:1.58、95% CI:0.30~8.40)または医学的誘発による寛解後(RR:0.83、95% CI:0.25~2.80)と比較したところ、統計学的な有意性は認められなかった。
再発リスク軽減の点でプロバイオティクスの有効性について、アミノサリチル酸またはアザチオプリンを用いた維持療法と比較したところ、統計学的な有意性は認められず(RR:0.67、95% CI:0.13~3.30)、この研究でプロバイオティクスのLactobacillus GGに関連する有害事象が生じた。
小児では、再発リスクの減少について、Lactobacillus GGとプラセボとでは統計学的に有意差は認められなかった(RR:1.85、95%、CI:0.77~4.40)。酵母菌Saccharomyces boulardiiを用いた小規模の研究では、プロバイオティクスと減量した維持療法との併用療法の方が、標準的な維持療法単独よりも優勢であったが、その差に統計学的な有意性は認められなかった(RR:0.17、95% CI:0.02~1.23)。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.25]
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