赤血球の自然経過による破壊と瀉血により、早産児では出生後に赤血球数が減少します。 早産児では赤血球の産生を刺激する血中の物質であるエリスロポエチン(EPO)が低値であることが、貧血の予防、治療にEPOを使用する論拠となっています。 総計262名の早産児が、輸血予防のためのEPOの早期投与と後期投与との比較を行う2件の研究に参加していました。 赤血球輸血の使用、輸血回数、赤血球輸血量、乳児1名当たりの供血者数の減少について、EPOの後期投与に比べた早期投与の利益は示されませんでした。 しかし、EPOの後期投与に比べて早期投与では、早産児の重篤な合併症である未熟児網膜症のリスクが高くなりました。 現在、どちらの研究でも参加した乳児の多数は研究に参加する前に供血者の血液に曝露されていたため、 どちらの投与でも供血者の血液へのあらゆる曝露に関して何らかの実質的な利益をもたらすというエビデンスは欠如しており、 EPO早期投与により未熟児網膜症のリスクが上昇しました。 EPOの早期投与も後期投与も推奨されません。
EPO後期投与に比べて、EPO早期投与による「1回以上の赤血球輸血」や「乳児1名当たりの輸血回数」の有意な減少はなかった。 EPO早期投与に伴うROP(あらゆる病期)リスクの統計学的に有意な上昇、および第3病期を超えるROPでの同様の傾向は、大いに懸念される所見であった。
早産児では血漿中エリスロポエチン(EPO)が低値であることが、貧血予防または治療にEPOを使用する論拠となっている。
早産児/低出生体重(LBW)児での赤血球輸血の減少におけるEPO早期開始と後期開始を比較した有効性および安全性を評価すること。
2006年にCochrane Neonatal Review Group(CNRG)に対する標準的検索を実施し、2009年に更新した。 2009年9月の更新では、2005~2009年9月のコクラン・ライブラリ、MEDLINE(PubMedによる検索)、CINAHL、EMBASEを検索した。 2012年3月に再検索を行った。 2000~2012年のPediatric Academic Societies' Annual meetingsをAbstracts2View™で電子的に検索したほか、 臨床試験登録(clinicaltrials.gov; controlled-trials.com; who.int/ictrp)も同様に検索した。
日齢8日未満の早産児またはLBW児を対象としたランダム化比較試験(RCT)または準RCT。 介入:EPO早期開始(日齢8日未満に開始)とEPO後期開始(日齢8~28日に開始)との比較。
CNRGの標準法に従った。投与効果として、定型的リスク比(RR)、定型的リスク差(RD)、 利益に対する治療必要数(NNTB)、害に対する治療必要数(NNTH)、平均差(MD)とすべてについての95%信頼区間(CI)を測定した。 メタアナリシスには固定効果モデルを用い、異質性はI二乗(I2)検定を用いて評価した。
2012年3月に同定した新たな試験はなかった。 262名の乳児を対象とした、2件の高品質なランダム化二重盲検比較研究が同定されていた。 早期EPOを支持する、「1回以上のRBC輸血使用」の有意ではない減少が認められた [2件の研究、乳児262名、定型的RR 0.91 (95%CI 0.78~1.06)、定型的RD -0.07 (95%CI -0.18~0.04、I2 = 0%(RRとRDの双方に対し)]。 EPO後期投与に比べEPO早期投与により、「乳児1名当たりの輸血回数」の有意ではない減少が認められた[定型的MD - 0.32 (95%CI -0.92~0.29)]。 乳児1名当たりの総輸血量、供血者数に有意な減少はみられなかった。早期EPOにより、 未熟児網膜症(ROP)(全病期)のリスクが有意に上昇した[2件の研究、乳児191名、定型的RR 1.40 (95%CI 1.05~1.86)、定型的RD 0.16 (95%CI 0.03~0.29)、NNTH 6 (95%CI 3~33)]。 本アウトカムには高い異質性が認められた(I2は、RRに対し86%、RDに対し81% )。 どちらの研究(乳児191名)も第3病期を超えるROPの報告があった。 統計学的に有意なリスク上昇は認められなかった[定型的RR 1.56 (95%CI 0.71~3.41)、定型的RD 0.05 (-0.04~0.14)]。 本アウトカムには異質性はなかった(RRとRDの双方に対し0%)。 他の重要な有用または有害な新生児アウトカムや副作用の報告はなかった。
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