論点
低所得から中所得の国々では、多くの女性が貧しい食生活を送っているため、健康に必要な栄養素や微量栄養素が不足している。微量栄養素とは、ごく少量ではあるが、体の正常な機能、成長および発育に重要であり、体が必要とするビタミンやミネラルのことである。妊娠中の女性は胎児にも栄養を与える必要があり、栄養不足になりやすい。また、栄養不足は妊娠中の母子の健康に影響を及ぼす可能性がある。
重要である理由
複数の微量栄養素を組み合わせた1つのサプリメントをとることは妊婦に複数の利益をもたらす費用対効果の高い方法として提案されてきた。微量栄養素欠乏症では、各栄養素が相互に影響しあうことが知られており、ひとつの栄養素よりも複数の栄養素を補充したほうが高い効果が得られる。しかし、相互作用により栄養素の一部の吸収不良につながる可能性がある。栄養素のなかには、高用量の場合母子のいずれかに悪影響を及ぼす恐れもある。
得られたエビデンス
Cochrane Pregnancy and Childbirth's Trials Register(コクランの妊娠と出産に関する臨床試験登録情報)を検索した(2018年2月23日)。今回のシステマティック・レビューには21試験(参加女性142,496人)を組み入れたが、データに寄与したのは20試験(参加女性141,849人)のみであった。レビューの対象とした試験は、通常の食事に加えて、鉄と葉酸を含む複数の微量栄養素を補充した妊婦と、鉄(葉酸の有無に関わらず)サプリメントを補給した妊婦とを比較していた。全体的に見ると、複数の微量栄養補充を受けた妊婦では、低出生体重児(体重が2500g未満)が少なく、妊娠37週以前の早産が少ないことがわかった。主要なアウトカムである低出生体重と早産については、それぞれエビデンス質は高度、中等度であることが明らかになった。
意味するもの
これらの知見は他でも観察されており、低所得国と中所得国の妊婦に対する複数の微量栄養素サプリメントによる鉄および葉酸サプリメントの代替を導く基礎を提供すると考えられる。
《実施組織》小林絵里子、増澤祐子 翻訳[2020.01.16]
本レビューはCD004905.pub5のアップデート版である。CD004905.pub5の翻訳は、厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] が実施した。
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
《CD004905.pub6》