乳癌は世界で最も罹患率が高い癌のひとつであり、その治療はホットフラッシュ、つまり顔面や首筋、胸部が急に熱くなる感覚(のぼせ、ほてり)を含め、患者を不安させる症状を伴うことがある。ホルモン療法は、閉経後の女性に対してそのような症状をコントロールするために用いられているが、乳癌の既往がある女性に対しては、癌の増殖を誘発する可能性があるため推奨されていない。本レビューは、乳癌の既往歴がある女性のホットフラッシュに対する処置としての非ホルモン療法の有用性を評価することを目的とした。
薬物療法を評価したランダム化比較試験10件と非薬物療法(補完代替療法)を評価したランダム化比較試験6件が同定された。薬物療法を検討した10件の試験は、2件がクロニジン(ホットフラッシュの開始に関係するノルエピネフリン受容体を刺激する高血圧症治療薬 /降圧薬)、1件がガバペンチン(作用機序は明らかではないが、ホットフラッシュを減弱させる抗けいれん薬)、6件が選択的セロトニンまたはセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(セロトニンとノルエピネフリンの濃度を増大する抗うつ薬、両物質ともホットフラッシュの発生に関係する)、特にベンラファキシン、パロキセチン、セルトラリンおよびフルオキセチン、1件がビタミンE(作用機序は不明)についてそれぞれ検討していた。
クロニジン、抗うつ薬およびガバペンチンは、ホットフラッシュの頻度と重症度を減少させた。ビタミンEでは、ホットフラッシュの頻度と重症度は減少しなかった。
非薬物療法を検討した試験6件のうち、2件がホメオパシー療法(1件は1群に対してホメオパシーのレメディ1種と別の群にハイランド(Hyland)社の更年期用サプリメントを、もう1件は製薬会社1社の錠剤、顆粒または液剤のホメオパシー治療薬を評価)、2件がリラクゼーション療法 (ストレス管理のほか、ストレス、深呼吸のテクニック、筋肉のリラクゼーションとイメージ指導から作業療法士が指導するリラクゼーション)、1件が鍼療法(治療セッション8回、つぼ19か所)およびもう1件が磁気療法(対象者の皮膚の上で、鍼または指圧の部位に磁気装置を貼付)を検討していた。
非薬物療法に関する試験では、ホットフラッシュの頻度と重症度を減少させることが、ほぼ確かである治療法は、リラクゼーション療法のみであった。ホメオパシー療法、鍼療法および磁気療法では、ホットフラッシュの頻度と重症度に差を生じないと考えられる。
本レビューには限界点があり、そのひとつが、どの治療法が他の治療法よりも優れているのかを明らかにすることができないことである。もうひとつは、いずれの試験でも有害事象が明確に報告されていなかったことである。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD004923.pub2】