夜間尿失禁は小児期には一般的であり、恥ずかしさ、ストレス、不都合を引き起こす可能性がある。目覚まし時計により治療の最良の機会が得られ、またデスモプレシンは治療中に夜間尿失禁の軽減や抑制に用いられることがある。報酬などの簡単な行動療法も、特に一次選択治療として役立つ。自分たちの子供たちの治療に補完療法を使用したが、試験のレビューはこれを裏付ける良いエビデンスが得られなかった。補完療法と目覚まし時計やデスモプレシンなどの確立された有効な方法を比較する信頼できる情報はなかった。さらに研究が必要である。
催眠、精神療法、鍼灸、カイロプラクティック、生薬の使用を支持する説得力に乏しいエビデンスが得られたが、いずれの場合も試験方法的に厳密さが疑われる単一の小規模試験から得られている。有効性、費用効果、および有害作用が明確に報告され、堅牢なランダム化試験が必要である。
夜尿症(夜間尿失禁)は、社会的障害やストレスを生じる病態であり、5歳の15〜20%、若年成人の最大2%で認められる。
補完療法や手術や食事療法など、小児の夜尿症に対する効果を評価し、他の介入と比較する。
PubMed(1950年~2010年6月)、EMBASE(1980年~2010年6月)、Traditional Chinese Medical Literature Analysis and Retrieval System(TCMLARS、1984年~2010年6月)、hinese Biomedical Literature Database(CBM、1975年~2010年6月)、China National Knowledge Infrastructure(CNKI、1979年~2010年6月)、VIPデータベース(1989年~2010年6月)、また関連文献の参考文献一覧を検索した。検索実施日はすべて2010年6月26日であった。言語による制約は設けなかった。
昼間の尿失禁のみを扱った試験を除き、小児の夜尿症の補完療法、その他様々な介入に関する、すべてのランダム化/準ランダム化試験を選択した。対照とした介入には、無治療、プラセボまたは擬似治療、アラーム、単純行動療法、またデスモプレシン、イミプラミンおよびその他各種薬剤、並びに介入を対象とした。
2名のレビューアが選択された試験の品質をそれぞれ評価し、データを抽出した。
24件のランダム化比較試験に2334例の小児被験者に参加し、1283例は補完療法を受けた。試験の質は悪いものであった:5件の試験で準ランダム化が実施され、5件の試験ではベースライン時に差が認められ、また17件の試験では追跡調査のデータが得られていない。
1件の試験で、催眠後の結果についてはイミプラミンと比較し良好であった(無効または投与中止後の再発に関する相対リスク(RR):0.42、95%信頼区間(CI):0.23~0.78)。心理療法は、アラーム(RR:0.28、95%CI:0.09~0.85)と報酬(RR:0.29、95%CI:0.09~0.90)の両方と比較し障害又は再発性を生じた小児が少ない点から良好であると考えられたが、これは単一の試験から得られたデータに基づいた結果である。1件の試験では、生薬はデスモプレシンより良好な結果が得られた(無効または投与中止後の再発のRR:0.35、95%CI:0.14〜0.85)。さらに実施した治験で、鍼治療では、偽鍼治療(無効または投与中止後の無効または再発のRR:0.67、95%CI:0.48〜0.94)と比較して良好な結果が得られた。カイロプラクティックによる調整法を積極的に行うことで、摸擬の調整法(無効例での改善のRR:0.76、95%CI:0.60〜0.95)より良好な結果が得られた。しかし、これらの各所見は、単一の小規模試験から得られているため、更に試験を実施し検証する必要がある。食事療法と感応通電法に関する所見は信頼性が低く、ホメオパシーや手術などを実施した試験は認められていない。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.26]
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