レビューの論点
2~59カ月の小児の肺炎予防に対する亜鉛補充の有効性を評価した。
背景
亜鉛は小児の成長と発達に不可欠な栄養素である。亜鉛摂取量が少なすぎると、感染のリスクが増加し、特に下痢と肺炎が増える。小児は食事から亜鉛を吸収しづらいため、亜鉛欠乏症になりやすい。特に低所得国では、出生前に母親から十分な亜鉛を受け取れない小児もいる。小児の亜鉛補充は肺炎を予防することが報告されている。
検索日
2016年10月までの文献を検索した。本レビューは、2010年に発表されたレビューのアップデート版である。今回の更新では新たな研究がなかった。
試験の特性
肺炎の予防を目的とした亜鉛補充について調べた6件の研究を選択した。研究はバングラデシュ、インド、ペルー、南アフリカで実施され、2~59カ月の小児5193例を対象とした。小児には亜鉛か、見た目は同じだが亜鉛を含まない製剤のいずれかを投与した。2件の研究では、小児にビタミンAも投与した。
試験の資金提供元
選択した研究はすべて資金提供を受けた。これらのうち3件は、資金提供機関が研究のデザインや結果に関与していないことを明確に記載していた。
主な結果
2~59カ月の小児の亜鉛補充は、肺炎の罹患率と有病率を大幅に低下させた。サブグループ解析では、より厳密な診断(放射線検査)では、肺炎の罹患率がさらに低下することがわかった。
エビデンスの質
GRADE評価により、全般的なエビデンスの質は低いと判断した。
小児への亜鉛補充は肺炎の罹患率と有病率を低下させる。
肺炎は5歳未満の小児の罹病率と死亡率の主な原因である。幼年期および低所得国での死亡が最も多い。毎日の亜鉛補充が、急性下気道感染(LRTI)を予防し、小児の死亡率を低下させることが報告されている。本稿は2010年に発表された初回レビューの更新である。
2~59カ月の小児の肺炎予防に対する亜鉛補充の有効性を評価すること。
CENTRAL(2016年10月第21号)、MEDLINE(1966年~2016年10月)、Embase(1974年~2016年10月)、LILACS(1982年~2016年10月)、CINAHL(1981年~2016年10月)、Web of Science(1985年~2016年10月)、およびIMSEAR(1980年~2016年10月)を検索した。
2~59カ月の小児の肺炎予防に対する亜鉛補充を評価したランダム化比較試験(RCT)。
2名のレビュー著者がそれぞれ試験の質を評価し、データを抽出した。
今回の更新で新たな研究は同定されなかった。5193例を対象とした6件の研究を選択した。
解析により、亜鉛補充が肺炎の罹患率を13%低下させ(固定効果リスク比(RR)0.87、95% 信頼区間(CI)0.81~0.94、6件の研究、エビデンスの質は低い)、肺炎の有病率を41%低下させることが明らかになった(変量効果RR 0.59、95% CI 0.35~0.99、1件の研究、n=609、エビデンスの質は低い)。サブグループ解析では、亜鉛は、胸部の診察またはX線写真で確定した肺炎の罹患率を21%低下させたが(固定効果RR 0.79、95% CI 0.71~0.88、4件の研究、n = 3261)、特異性の低い症例定義の肺炎(この年齢層に特異的な頻呼吸で下胸部陥凹の有無を問わない)では効果がみられなかった(固定効果RR 0.95、95% CI 0.86~1.06、4件の研究、n = 1932)。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
CD005978 Pub3