分子特異的標的薬の数種は、インターフェロン・アルファを上回る臨床的な利益を示し、以前のサイトカイン療法後あるいは初回抗血管新生療法後のいずれでも有益性を示した。本病態における標的薬剤の役割を十分に確立するため、さらなる研究が必要である。
進行腎細胞癌は様々な薬物療法に抵抗性であり、新種の薬物療法が必要である。標的薬剤は、既知の分子経路を阻害するもので、ここ10年間あまり腎癌を対象に検証されてきた。
1)進行腎細胞癌における標的薬剤を検証しているランダム化研究のシステマティックかつ定期更新レビューを提示すること 2)一般的な標準治療を上回る、標的薬剤の臨床的利益の種類および程度を同定すること
検索期間:2000年1月~2010年6月 1)CENTRAL、MEDLINEおよびEMBASEのデータベースの電子的検索 2)国際的な癌学会抄録のハンドサーチ
割りつけにより事前に規定したあらゆる癌アウトカムを報告している、進行腎細胞癌患者を対象にした、標的薬剤を含むランダム化比較研究
大部分の標準的検索およびデータ抽出は2名のレビューアが別々に実施し、その後相違を解決した。ハンドサーチ、生活の質および毒性データの抽出、最初の解析の大半、ならびにバイアスリスク評価は1名のレビューアが実施し、必要であれば、その後追加されたレビューアが妥当性を確認した。適格性が十分な25件の研究は、大多数がステージIVで、61%は全身治療歴のない総患者数7,484例を対象に13種類の異なる標的薬剤を検証していた。患者の大多数のパフォーマンス状態は良好であった[ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)0~1]。大部分の比較は、それぞれ1件の研究でのみ検討されていた。プラセボ比較研究、全生存率を主要アウトカムとして有する研究、あるいは介入割りつけを知らない独立した放射線レビューアが進行を評価している研究は、バイアスリスクが低いと判断した。
大部分の治療の進歩は、分子病理学的な血管新生促進が判明した明細胞サブタイプの進行腎癌患者で認められてきた。全身治療を受けていない患者では、血管新生を阻害する2つのアプローチが利益を示した。インターフェロン・アルファ単独療法に比較して、経口スニチニブは、予後良好または中等度の患者において、全生存率[死亡リスク低下18%、生存期間中央値改善21.8カ月~26.4カ月、(P = 0.049)、クロスオーバーについて無補正]を含む複数のアウトカムを改善した。同一の設定で、2件の研究により、インターフェロン・アルファへの隔週のベバシズマブ静脈投与の追加も、主要な寛解の確率を改善し、無進行生存を延長した。これら2件のベバシズマブ+インターフェロン研究はそれぞれ、統計学的有意性に近似する全生存率の改善を示した(死亡リスクの14%の低下を各研究が示した)。パゾパニブおよびチボザニブなどのその後追加された抗血管新生薬は、評価の初期段階である。 サイトカイン療法歴のある明細胞型腎癌の進行後、経口ソラフェニブにより、プラセボに比較して生活の質が改善した。スニチニブまたはソラフェニブによる第一選択標的療法歴がある、あるいはその療法の6カ月以内の進行明細胞型腎癌患者では、経口投与の標的薬mTOR(ラパマイシンの哺乳類標的)阻害薬エベロリムスにより、生活の質の損失なく無病生存が延長した。寛解は非常にまれで全生存に改善がないことが本研究で認められ、本研究ではプラセボ割りつけ患者の大多数が疾患進行時にエベロリムスの投与を受けていた。 腎癌の組織型を問わず予後不良な特徴を有する治療歴のない患者では、週1回の静脈内投与のテムシロリムス(mTOR阻害薬)により、インターフェロン・アルファと比較してアウトカムが改善した(全生存中央値の改善、7.3カ月~10.9カ月、P = 0.008)。特に興味深いことに、探索的解析では、非明細胞サブグループにおいて死亡ハザードの顕著な低下が認められた。 標的薬剤の併用が評価されつつあるが毒性に問題がある。