背景
神経ブロックは、手術のために腕や脚の全部または一部を麻痺させるため(末梢神経ブロック)、または手術後の痛みを和らげるため、またはその両方の目的のために使用される。超音波ガイドを使用することで、麻酔医は皮膚の下に重要な構造物を「見る」ことができ、他の組織や臓器を損傷することなく局所麻酔薬の注入を正確に行うことが可能になる。我々は、成人の腕や脚の神経ブロックを行うための、他の神経を同定する方法と比較して、超音波ガイドに利点があるかどうかを評価することを目的とした。
研究の特性
エビデンスは、2014年8月27日現在のものである。計2844人を対象とした、32件の研究を同定した。ほとんどの研究では、超音波と電気神経刺激装置との比較か、超音波と神経刺激装置の併用と神経刺激装置単独との比較を行っていた。2015年5月にデータの再検索を行った。本レビューを次回更新する際には、関心のある11件の研究も対象とする予定である。
主な結果
統計学的検定を用いた研究結果を組み合わせた結果、超音波ガイドや超音波ガイドと他の手技を併用した場合の方が、行った神経ブロックが手術に適していると評価される可能性が高く、追加の麻酔を必要とする可能性が低いことがわかった。また、針が神経に触れることで感じる鋭い痛みや、誤って血管を刺してしまうなどの合併症が少ないこともわかった。また、超音波ガイドだけを使用した方が、神経ブロックを行うのに時間がかからなかった。
エビデンスの質
研究の質にはばらつきがあり、どの研究でも評価項目を評価する者が神経ブロックにどの手技が使われたか分からないようにするための十分な試みをしていなかった。また、神経ブロックを行った医療者がどのように経験を積んでいるかが明確に説明されていない研究が多かった。超音波ガイドはまだ比較的新しい技術であり、麻酔医の中には経験が浅い人もいるため、この点は特に重要である。我々は、神経ブロックが手術に十分かつ適切であったかどうかについてのエビデンスは中程度の質であると評価したが、その他のアウトカムについてのエビデンスは低度か非常に低度であると判断した。
結論
我々が得たエビデンスは、超音波ガイドが末梢神経ブロックにとって、他の手技よりも優れていることを示唆している。しかしながら、この結果が行われた手技に関する医療者の経験に依存しているのかどうかについて、結論が出せない。
《実施組織》 杉山伸子 翻訳、大須賀明里 監訳[2020.04.24]
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《CD006459.pub3》