クローン病は慢性疾患で、腸管の炎症に起因する下痢、体重減少または腹痛が認められる。クローン病では腸管の炎症部位を切除するため手術が必要な場合が多いが、しばしば手術部位で炎症が再発・再燃する。本レビューでは、クローン病の手術後に炎症の再発(再燃)を予防する手法として薬物を使用した場合の効果を検討した、既報の研究の結果を解析する。可能な場合は、他の治療の結果と比較するために研究結果を統合した。メトロニダゾール、メサラミン(メサラジン)、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、インフリキシマブなど、複数の薬物が炎症の再発・再燃を低減すると考えられた。このうち一部の薬剤では顕著な副作用が認められるため、薬物使用を判断する場合は、患者ごとにリスク−ベネフィットのバランスを慎重に考慮する必要がある。
インフリキシマブ、ブデゾニド、tenovilおよびインターロイキン-10に関して結論を導くには、ランダム化比較試験が不十分であった。抗菌薬のニトロイミダゾール、メサラミン、およびアザチオプリン/6MPまたはインフリキシマブによる免疫抑制療法は、いずれもプラセボと比較してクローン病の術後再発・再燃予防に優れていると考えられる。最適な術後予防法を決定するには、これらの治療法の費用、毒性および忍容性について慎重に検討する必要がある。
クローン病は腸管切除術後に再発・再燃することが多い。術後におけるクローン病の内視鏡的再発または臨床的再発を減らすために、複数の薬剤が比較対照試験で検討されている。
術後のクローン病再発・再燃予防に対する薬物療法の使用に関するシステマティックレビューを実施すること。
関連研究を同定するため、MEDLINE、EMBASEおよびCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)を検索した。選択した論文の参考文献一覧およびDigestive Disease Weekのアブストラクトも検索した。
腸管でのクローン病再・再燃発予防に対し、薬物療法をプラセボまたは他の薬物と比較したランダム化比較試験を組み入れた。
2名のレビュー著者が、検索語を含むすべてのアブストラクトのレビューを行い、選択基準を満たすものを完全データ抽出の対象とした。二値データは相対リスクおよび95%信頼区間を用いて要約した。固定効果モデルを用い、感度分析を実施した。
23件の研究を同定した。いずれのアウトカムに対しても、プロバイオティクスはプラセボと比較して優れた効果が得られなかった。抗菌薬のニトロイミダゾールは、プラセボと比較して臨床的再発(RR 0.23; 95%CI 0.09〜0.57, NNT=4)および内視鏡的再発(RR 0.44; 95%CI 0.26〜0.74, NNT = 4)のリスクを軽減するようであった。しかし、ニトロイミダゾールは重篤な有害事象のリスク上昇と関連していた(RR 2.39, 95% CI 1.5〜3.7)。メサラミン(メサラジン)療法は、プラセボと比較して臨床的再発(RR 0.76; 95% CI 0.62 〜0.94, NNT = 12)および高度の内視鏡的再発(RR 0.50; 95% CI 0.29〜0.84, NNT = 8)のリスクを有意に低下させた。アザチオプリン/6-メルカプトプリン(6-MP)も、プラセボと比較して臨床的再発(RR 0.59; 95% CI 0.38〜0.92, NNT = 7)および高度の内視鏡的再発(RR 0.64; 95% CI 0.44〜0.92, NNT = 4)のリスクを有意に低下させた。いずれの薬剤も重篤な有害事象のリスクはプラセボを上回ることはなかったアザチオプリン/6MPと比較して、メサラミンは重症度にかかわらず内視鏡的再発のリスクが高かったが(RR 1.45, 95% CI 1.03〜2.06)、重篤な有害事象の発現率は低かった(RR 0.51; 95% CI 0.30〜0.89)。メサラミンとアザチオプリン/6MPの間で、その他のアウトカムに有意差は認められなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.28]
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