小児の骨密度を改善するためのビタミンD

本稿はコクラン・レビューの要約であり、小児の骨密度に対するビタミンD補充の効果に関する研究でわかったことを記載する。

本レビューでは、健常児にビタミンDを補充しても、大腿骨近位部、腰椎、前腕、全身の骨密度は一般的に改善しないことを示している。

ビタミンDが低値の小児ではビタミンD補充が骨密度を改善する可能性があることを、複数のエビデンスで示唆しているが、これは不確かである。

副作用や合併症に関する正確な情報はないが、得られた情報ではビタミンDサプリメントの忍容性が良好であることを示唆している。

骨粗鬆症やビタミンDとは何か?

骨粗鬆症は、骨が弱くてもろいため簡単に折れる状態である。晩年の骨粗鬆症や骨折のリスクは、小児期に形成された骨の量と、成人期に失った骨の量による。晩年の骨粗鬆症や骨折を防ぐ方法の1つは、若いうちに骨を強くしておくことである。ビタミンDは、食事からカルシウムを体内に吸収するのを促進し、体内からのカルシウムの喪失を減らし、カルシウムを骨に沈着させて成長する骨の質を高めるのに重要な役割を担う。したがって、小児期に体内のビタミンD値が低ければ骨の成長は少ないが、補充によりビタミンD値が改善すれば成長する骨が増えると考えられる。骨密度は骨強度の主な指標である。骨塩量は各部位で示され、骨の健康増進を目的としたビタミンD補充などの介入効果の指標として用いられる。

著者の結論: 

これらの結果では、ビタミンDが正常値の健常児に対する、骨密度の改善を目的としたビタミンD補充は支持しないが、ビタミンD欠乏児への補充は臨床的に有益である可能性を示唆している。これを確認するため、ビタミンD欠乏児を対象としたさらなるRCTが必要である。

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背景: 

小児の骨密度の改善を目的としたビタミンD補充に関するランダム化比較試験(RCT)の結果には矛盾がある。

目的: 

小児の骨塩密度を改善するためのビタミンD補充の有効性について、性別、年齢や思春期、ビタミンDの種類や用量、ベースラインのビタミンDの状態などによる効果の変動や、補充中止後の効果の持続性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL 、2009年第3号)、MEDLINE(1966年~現在)、EMBASE(1980年~現在)、CINAHL(1982年~現在)、AMED(1985年~現在)、およびISI Web of Science(1945年~現在)を2009年8月9日に検索し、主要な学会誌の抄録を手作業で検索した。

選択基準: 

健康な小児と若年者(生後1カ月~20歳未満)にビタミンDを3カ月以上補充した際の骨密度アウトカムを調べたプラセボ対照RCT。

データ収集と分析: 

2名の著者が参考文献リストを調べて選択し、バイアスのリスクを評価し、データを抽出した。メタアナリシスを実施し、治療群とコントロール群のアウトカムについて、ベースラインからの変化率を標準化平均差(SMD)として算出した。性別、思春期、ビタミンDの用量、およびベースラインの血清ビタミンDによるサブグループ解析を実施した。これらについても、遵守や割りつけの隠蔽化(コンシールメント)と同様に、異質性の原因になる可能性があると判断した。

主な結果: 

6件のRCT(プラセボ343 例、ビタミンD 541例)を選択してメタアナリシスを実施した。全身の骨塩量(BMC)、大腿骨近位部の骨塩密度(BMD)、前腕のBMDについて、ビタミンD補充による統計学的に有意な効果はなかった。腰椎のBMDにわずかに効果的な傾向がみられた(SMD 0.15、95% CI -0.01~0.31、P = 0.07)。血清ビタミンDの高値と低値ではいずれの部位でも差がなかったが、ビタミンD濃度が低いと全身のBMCに対する効果が大きくなる傾向がみられた(差についてP = 0.09)。血清ビタミンDの低値に関する研究では、補充群で有意な効果がみられ、全身のBMCと腰椎のBMDがベースラインから約2.6%、および1.7 %増加した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.28]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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