背景
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とは、睡眠時に空気の通り道である上気道が部分的または完全に閉塞する疾患である。この疾患は小児の約1~4%で確認される。小児期のOSAの原因として最も一般的なものは、咽頭扁桃や扁桃腺の肥大である。OSAの治療法として現在、咽頭扁桃および扁桃腺の外科的摘出が推奨されている。抗炎症薬による治療は、OSAの軽度の症例における外科的治療の代替治療である。
レビューの論点
本レビューの目的は、1歳~16歳の小児のOSA治療における、抗炎症薬の有用性と安全性に関するエビデンスを評価することである。本レビューの主要アウトカムは、睡眠1時間あたりの呼吸の停止回数、浅い呼吸のエピソード(無呼吸低呼吸指数:AHI)と、薬剤による重大な予期せぬ影響である。
研究の特徴
本レビューでは5件の試験を組み入れた。これらの研究には25~62人の、専門の睡眠外来で治療を受けた軽度~中等度のOSAを有する、1歳~11歳の小児が含まれていた。解析対象の研究では、2種類の異なる抗炎症薬が使用されていた。75人の小児が、鼻腔噴霧用ステロイド薬またはプラセボのいずれかに無作為に割り付けられた。103人の小児が、モンテルカスト錠(抗炎症薬の一種)またはプラセボのいずれかに無作為に割り付けられた。
研究の資金提供元
3件の研究は、医薬品メーカーの支援を受けていた。
主な結果
75人の小児を対象とした2件の研究によると、鼻腔噴霧用ステロイド薬を投与された小児とプラセボを投与された小児を比較したが、呼吸の停止回数、浅い呼吸のエピソード、血中酸素濃度の低下エピソード、睡眠障害の有無に関して差異があるかどうかは不明であった。
103人の小児を対象とした2件の研究によると、モンテルカスト錠を投与された小児は、プラセボを投与された小児と比較して、呼吸の停止回数、浅い呼吸のエピソードおよび睡眠障害が少ないことが判明した。だが、モンテルカスト錠を投与された小児とプラセボを投与された小児を比較して、血中酸素の低下エピソードの回数に差異があるかどうかは不明であった。
全ての研究で予期せぬ影響(鼻血など)について評価しているが、その発生頻度は低く、軽微なものであった。また、重大な予期せぬ影響は報告されていない。
エビデンスの確実性
OSAの治療における鼻腔噴霧用ステロイド薬について、有益な効果の範囲が広く、組み入れた2件の研究間で効果に非一貫性が認められたため、主要アウトカムのエビデンスの確実性は低い。本レビューでは研究結果の質に重大な懸念があったため、1件の研究を解析から除外した。
OSAの治療におけるモンテルカスト錠の使用について、主要アウトカムのエビデンスの確実性は中程度である。1件の研究において研究デザインと実施方法に懸念が生じた。また、組み入れた2件の研究間で効果にいくぶんかの非一貫性があったことも懸念材料である。
エビデンスは2019年10月現在のものである。
《実施組織》森岡敬一朗 翻訳、小林絵里子監訳[2020.07.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007074.pub3》