身体の切断された部分(幻肢痛)または断端(断端痛)のいずれかまたは両方に疼痛を生じる場合がある。幻肢痛および断端痛は複雑な疾患で、切断術を受けた患者の最大80%が罹患する。根本的な原因は完全には解明されていない。最も一般的な治療法は薬物療法であるが、疾患に対する治療効果は思わしくない。非薬物的介入の必要性が認識されており、TENSは重要な役割を担う可能性がある。
TENSは安価で安全かつ簡便な鎮痛法である。電池式の携帯装置で発生させた電流が正常な皮膚の表面を通過して下部の神経を活性化する。
更新のために2015年3月におこなった様々なデータベースの検索において、本レビューに含まれるための適格基準を満たす研究は見出されなかった。
幻肢痛および断端痛に対するTENSの効果に対する判定は現時点ではおこなうことができない。
幻肢痛および断端痛に対するTENSの危険リスクについても評価することができない。
幻肢痛および断端痛にたいするTENSの大規模多施設ランダム化比較試験が必要である。
幻肢痛および断端痛の管理に対するTENSの有効性の判断材料となるRCTは存在しなかった。幻肢痛および断端痛に対するTENSに関する既報の文献は方法論の厳密性を欠いており、確実にTENSの有効性を評価するためには確固たる報告が必要である。TENSの有効性を判断する前に、RCTによるエビデンスがさらに必要である。 本レビューのオリジナル版(初版)の発表から、新たな研究は行われておらず、結論は変わらないままである。
成人における切断後の幻肢痛および断端痛に対する 経皮的電気神経刺激(TENS)に関しては、最初のコクランレビューが2010年のIssue 5において報告された。 身体の切断された部分(幻肢痛)または断端(断端痛)のいずれかまたは両方に疼痛を生じる場合がある。 幻肢痛および断端痛は複雑かつ多次元的であり、その基本的な病態生理は不明なままである。幻肢痛および断端痛の影響を受けている人にとって、その症状は深刻な負担となっている。 中心となる治療法は主に薬物療法であるが、非薬物的介入の必要性の認識が向上してきている。TENSは治療選択として推奨されてきているものの、利用可能なエビデンスのシステマティックレビューは行われていない。そのため、幻肢痛および断端痛に対するTENSの効果については現時点においても不明である。
成人における切断術後の幻肢痛および断端痛の治療に対するTENSの鎮痛効果を評価すること。
MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、EMBASE、PsycINFO、AMED、CINAHL、PEDROおよびSPORTDiscusを検索した(2010年2月)。今回の更新にあたって、関連するRCTを検索するため同じデータベースを用いて、2010年から2015年3月25日までの分を検索した。
成人における切断術後の幻肢痛および断端痛の管理にTENSを使用した場合について検証したランダム化比較試験(RCT)のみを対象とした。
2名のレビュー著者が独立して試験の質を評価し、データを抽出した。利用可能かつ適切な場合はアウトカム指標のデータを統合し、TENSの有効性の総合的な推定値として示すよう計画した。
初版のレビューにおいては、 成人の幻肢痛および断端痛の治療に対するTENSの有効性を検証したRCTはなかった。今回の更新においても、レビューに含めるべき追加のRCTは同定されたなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.2]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。