変形性関節症に対するドキシサイクリン

コクラン・レビューのこのまとめでは、変形性関節症に対するドキシサイクリンの効果について研究から分かったことを示します。すべての関連のありそうな研究を検索した結果、合計663名の患者を含んだ2件の研究が見つかりました。 これによりますと、変形性関節症の患者に対しては次のようなことが言えそうです。 <ul type="disc"><li>ドキシサイクリンは関節痛や身体機能について臨床的に重要な改善をもたらさず、臨床的に意味があるのかわからない関節の隙間が少なくなる効果を示すのみであること。</li><li>ドキシサイクリンは副作用を生じる可能性があること。残念ながらドキシサイクリンの副作用や合併症については正確な情報がありません。とくに、まれで、重篤な副作用については、その傾向が強くなります。</li></ul> 変形性関節症とはどんな病気で、ドキシサイクリンとは何でしょうか?<div style="margin:0.4em 0 0 1em;">変形性関節症は、膝や股関節などの関節の病気です。関節の軟骨が減ると、そのダメージを直そうとして骨が成長します。しかし、変形性関節症では、骨が異常な発育をして、良くなるかわりにかえって悪いことになります。たとえば、骨が変形して関節が痛くなったり、不安定になります。このため、身体機能やヒアを使う能力に影響が出てきます。 抗生剤の1つであるドキシサイクリンは、関節に対するダメージを止めることができるかもしれないとされてきました。ドキシサイクリンは錠剤です。</div> ドキシサイクリンを服用した変形性関節症の患者に起きること 痛みについて<div style="margin:0.4em 0 0 1em;">ドキシサイクリンは痛みには効果が期待できません。ドキシサイクリンを服用した患者は、18か月後に痛みの改善の程度を1.9と評価したのに対し、プラセボ(偽薬)を服用した患者の18か月後の改善は1.8でした(0を痛みなし、10をこれ以上ない痛みとした際の評価のスケール)。別の見方でも、33%の患者がドキシサイクリンは治療に効き目があったと回答したのに対し、プラセボを使った患者の31%も効果があったと答えています。2%多くの患者が、ドキシサイクリンの方がプラセボよりも効果があったと答えているわけですが。</div> 身体機能について<div style="margin:0.4em 0 0 1em;">ドキシサイクリンは、身体機能についても効果は見られません。ドキシサイクリンを服用した患者は、18か月後に身体機能の改善の程度をおよそ1.4と評価したのに対し、プラセボを服用した患者の18か月後の評価は1.2でした(0は障害なし、10をこれ以上ない障害とした際の評価のスケール)。別の言い方をすると、ドキシサイクリンを服用した29%の患者が身体機能に効果があったとしたのに対し、プラセボを服用した患者の26%も効果があったと言っています。3%だけ多くの患者が、ドキシサイクリンの方がプラセボよりも効果があったと答えているわけです。</div> 副作用について<div style="margin:0.4em 0 0 1em;">ドキシサイクリンを服用した患者の20%に何らかの副作用が現れました。プラセボ服用者の15%にも、何らかの副作用が生じています。ドキシサイクリンを服用した方が、5%多く副作用が現れています。</div>

著者の結論: 

本アップデートで、有効性アウトカムについてのエビデンスの強さは低から中等度へ改善し、ドキシサイクリンの症状上の利益は最小限または存在しない程度であることが確認され、関節間隙狭小という点での小さな利益の臨床的重要性には疑問があり、安全性の問題の方が上回っていることを確認した。要約推定値の信頼区間は、症状の改善における臨床的に意味のある差を排除しており、関節間隙狭小という点での小さい利益は有害性を上回らない。

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背景: 

変形性関節症は、関節軟骨の変性が関与する慢性の関節疾患である。前臨床データでは、ドキシサイクリンには軟骨変性を遅延させる可能性があり、変形性関節症の治療に対し病態修飾薬として作用すると示唆されている。これは、2009年発表のコクラン・レビュー第一版の更新である。

目的: 

関節症または股関節の変形性関節症の人における、プラセボまたは無介入と比べたドキシサイクリンの疼痛および機能に対する効果を検討すること。

検索戦略: 

CENTRAL(コクラン・ライブラリ2008年第3号)、2008年7月28日までのMEDLINE、EMBASEおよびCINAHLを検索し、更新は2012年3月16日に実施した。さらに、学会抄録、参考文献リストをチェックし著者らに連絡を取った。

選択基準: 

膝関節および股関節の変形性関節症の人を対象に、プラセボまたは無介入と、用法・用量および製剤を問わないドキシサイクリンを比較しているランダム化比較試験(RCT)または準RCTである場合、その研究を選択した。

データ収集と分析: 

データを2回抽出した。欠測しているアウトカム情報を得るため、研究者に連絡を取った。連続的アウトカムでは、追跡時の実験群とコントロール群の平均差を算出し、二値アウトカムではリスク比(RR)を算出した。

主な結果: 

その後追加された1件の試験(参加者232名)を同定し、本アップデートに2件の試験(参加者663名)を選択した。方法論的質および報告の質は中等度と判断した。投与終了時、臨床アウトカムは2群間で同程度であり、効果サイズは-0.05[95%信頼区間(CI)-0.22~0.13]で、これはドキシサイクリンとコントロールとの疼痛スコアの差で-0.1 cm(95%CI -0.6~0.3 cm、10 cm視覚アナログスケール)に相当し、ベースラインからの改善は32%対29%であった(差は3%、95%CI -5%~10%)。機能での効果サイズは -0.07(95% CI -0.25~0.10)で、これはドキシサイクリンとコントロールとの差で-0.2[95%CI -0.5~0.2、0~10の範囲であるWestern Ontario and McMaster Universities Arthritis Index(WOMAC)能力障害サブスケール]に相当し、改善は24%対21%(差は3%、95%CI -3%~10%)であった。1件の試験で評価のあった関節狭小の最小間隙の変化の差では、ドキシサイクリンを支持する結果(-0.15 mm、95%CI -0.28~-0.02 mm)がみられ、-0.23標準偏差(95%CI -0.44~-0.02)の小さな効果サイズに相当した。有害事象による参加中止はプラセボよりドキシサイクリン群で多かった(RR 2.28、95%CI 1.06~4.90)。プラセボ群よりドキシサイクリン群の参加者で重篤な有害事象が多かったというエビデンスはなかったが、推定値は不正確であった(RR 1.07、95%CI 0.68~1.68)。

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