更年期のホットフラッシュに対する鍼療法

レビューの論点:鍼療法は、ホットフラッシュの軽減に安全かつ効果的で、ホットフラッシュのある更年期女性の生活の質を改善するか。

背景:ホットフラッシュは閉経周辺期および閉経に関連する最も一般的な症状である。ホルモン療法(HT)は症状に対する最も有効な治療法と考えられている。しかし、ホルモン療法は悪影響がある可能性を指摘されていて、多くの女性はホルモン療法を使用せず、鍼療法などの代替療法を模索している。コクラン・レビュー著者が調査したエビデンスは、現在から2013年1月までである。

研究の特性:16件のランダム化比較試験の女性1155名をレビューの対象とした。ほとんどが小規模で短期間であった。16件のうち15件の試験で資金提供元が報告されていた。

主要な所見:鍼療法を偽鍼療法と比較すると、ホットフラッシュに対する効果の差を示すエビデンスは認められなかった。鍼療法を無治療と比較すると、鍼療法のベネフィットがあると考えられるが、HTと比較すると効果が低いと考えられる。

エビデンスの質:エビデンスの質は低い、または非常に低いため、これらの所見は十分な注意の元に扱われるべきである。また、鍼療法と無治療またはHTとの比較試験は、偽鍼療法またはプラセボHTとの対照ではなかった。有害作用に関するデータは明記されていなかった。

著者の結論: 

鍼療法における更年期の血管運動神経系症状の効果を決定するには、エビデンスが不十分であった。鍼療法と偽鍼療法とを比較すると、更年期の血管運動神経系症状における効果に有意差を示すエビデンスは認められなかった。鍼療法と無治療とを比較すると、鍼療法にベネフィットがあると考えられるが、鍼療法はHTと比較して効果が少ないと考えられる。エビデンスの質が低い、または非常に低いため、これらの所見は十分な注意の元に扱われるべきである。また、鍼療法と無治療またはHTとの比較試験は、偽鍼療法またはプラセボHTとの対照ではなかった。有害作用に関するデータは明記されていなかった。

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背景: 

ホットフラッシュは最も一般的な更年期の血管運動神経系症状である。ホルモン療法(HT)はホットフラッシュの軽減に頻繁に推奨されるが、HTの健康リスクの懸念により、女性の代替療法のへ関心が高まっている。鍼療法がホットフラッシュの頻度と重症度を低下する可能性が指摘されている。

目的: 

鍼療法がホットフラッシュ軽減に効果的かつ安全で、血管運動神経系症状のある更年期女性の生活の質を改善するかどうかを検討すること。

検索戦略: 

2013年1月に下記のデータベースを検索した。the Cochrane Menstrual Disorders and Subfertility Group Specialised Trials Reg- ister、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、PubMed、 EMBASE、CINAHL、PsycINFO、Chinese Biomedical Literature Database (CBM)、Chinese Medical Current Content (CMCC)、China National Knowledge Infrastructure (CNKI)、VIP database、Dissertation Abstracts International、Current Controlled Trials、 Clinicaltrials.gov、National Center for Complementary and Alternative Medicine (NCCAM)、BIOSIS、AMED、Acubriefs、Acubase。

選択基準: 

更年期のホットフラッシュ軽減のための治療および症状がある閉経周辺期/閉経後の女性の生活の質向上のためのあらゆる種類の鍼療法を無治療/対照または他の治療と比較したランダム化比較試験(RCT)を組入れの対象とした。

データ収集と分析: 

16件の試験における女性1155例を組入れの対象とした。3名のレビュー著者が独立して試験の適性と質を評価し、データを抽出した。適所でデータをプールし、平均差(MD)、標準化平均差(SMD)を95%信頼区間(CI)と共に算出した。Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation (GRADE)基準を用いて、全体的なエビデンスの質を評価した。

主な結果: 

8件の試験が鍼療法と偽鍼療法とを比較した。ホットフラッシュ頻度における群間に有為差は認められなかった(MD -1.13フラッシュ /日、95% CI -2.55〜0.29、8 件の試験、女性414名、I2 = 70%、エビデンスの質は低い)が、鍼療法群ではフラッシュの重症度が有意に低く、効果サイズは小さかった(SMD -0.45、95% CI -0.84 〜 -0.05、6件の試験、女性297名、I2= 62%、エビデンスの質は非常に低い)。これらのアウトカムは共に実質的な異質性がみられた。乳癌の女性を除外した研究の事後感受性解析では、異質性はホットフラッシュ頻度で0%、ホットフラッシュ重症度で34%に低減し、どちらのアウトカムにも群間の有意差は認められなかった。

3件の試験が鍼療法とHTとを比較した。鍼療法は、HTと比較して、有意に高いホットフラッシュ頻度に関連していた(MD 3.18 フラッシュ/日、95% CI 2.06〜4.29、3 件の試験、女性114名、I2= 0%、エビデンスの質は低い)。ホットフラッシュ重症度において群間に有意差は認められなかった(MD 0.53、95% CI -0.14〜1.20、2件の試験、女性84名、I2= 57%、エビデンスの質は低い)。

1件の試験は、電気鍼療法とリラクゼーションとを比較した。ホットフラッシュ頻度において群間に有意差は認められず(MD -0.40フラッシュ/日、95% CI -2.18〜1.38、1件の試験、女性38名、エビデンスの質は非常に低い)、ホットフラッシュ重症度においても認められなかった(MD 0.20、95% CI -0.85〜1.25、1件の試験、女性38名、エビデンスの質は非常に低い)。

4件の試験が鍼療法と待機者リスト、または無介入とを比較した。伝統的な鍼療法は、ベースラインからホットフラッシュ頻度の低減に有意な効果がみられ(SMD -0.50、95% CI   -0.69 〜 -0.31、3件の試験、女性463名、I2= 0%、エビデンスの質は低い)、ホットフラッシュ重症度の低減にも有意な効果がみられた(SMD -0.54、95% CI -0.73 〜 -0.35、3件の試験、女性463名、I2 = 0%、エビデンスの質は低い)。効果サイズは両症例で中等度であった。

生活の質評価では、鍼療法がHTと比較して有意な効果はみられなかったが、伝統的な鍼療法は無介入と比較して、有意な効果がみられた。生活の質において、鍼療法と他の比較対象との有意差は認められなかった。有害作用に関するデータは明記されていなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.4]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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