レビューの論点
子宮内膜症と診断されている女性にペントキシフィリンを投与することで、痛みの症状や妊娠の転帰が改善するかどうか、有効性と安全性を検討した。ペントキシフィリンは免疫調整薬(免疫系に作用する物質)であり、この病態の治療に異なるアプローチを提供する可能性がある。ペントキシフィリンを無治療、プラセボ(偽の治療)、別の内科的治療、外科的治療と比較することを目的とした。
背景
子宮内膜症は、子宮内膜(子宮の内側を覆う組織)に似た組織が子宮の外で成長して痛みを引き起こす状態であり、女性の妊孕能に影響する可能性がある。最近の研究ではこの病気に対する免疫系の影響が支持されている。ペントキシフィリンは免疫調整薬であり、抗炎症(炎症を抑える)作用も持つため、排卵を抑制することなく病気の症状を和らげられるかもしれない。
研究の特性
5件のランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群にランダムに振り分ける試験)を対象とし、合計415人の女性を対象に、ペントキシフィリンとプラセボ、無治療、その他の内科的治療を比較した。このエビデンスは2020年12月16日現在のものである。
主な結果
子宮内膜症の女性における妊孕性や痛みの緩和に関するペントキシフィリンの有効性と安全性について、結論を出すのに十分なエビデンスはなかった。主要評価項目である出産率や有害事象(副作用)について報告した研究はなかった。
ペントキシフィリンとプラセボの比較
プラセボと比較して、ペントキシフィリンが臨床的妊娠率、子宮内膜症の再発率、流産率に影響するかは不明であった。その他の結果についてのデータは不足していた。
ペントキシフィリンと無治療の比較
無治療と比較して、ペントキシフィリンが全体的な痛みに影響を与えるかどうかについては不明であった。その他の結果についてのデータは不足していた。
ペントキシフィリンと他の内科的治療を比較した研究のデータは抽出することができず、ペントキシフィリンと外科的治療法を比較した研究はなかった。
エビデンスの質
全体的なエビデンスの質は非常に低かった。エビデンスの主な限界点は、ITT解析(脱落したか、治療を完全に遵守したか、代替治療に切り替えたかにかかわらず、試験に参加したした全ての人を初めに(無作為に)割り付けられた群に基づいて評価すること)の欠如、盲検化(試験に参加した女性と研究者の両方が、使用された治療法を知らされないようにすること)の欠如、不精確さ(ランダムな誤差といくつかの研究の規模が小さいこと)であった。
《実施組織》 内藤未帆、杉山伸子 翻訳[2021.11.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007677.pub4》