癌と診断される患者数は毎年増加している。ある悪性腫瘍は複数の集団で主な死因となっている。癌と診断された人は、癌と闘い、症状を管理し、放射線療法や化学療法の副作用に対処するために、あらゆることに取り組もうとする。補完医療や代替医療に取り組む人も多い。G. lucidumの抽出物は伝統的な漢方(TCM)の医師が幅広く用いる薬である。癌治療において、通常は免疫系を維持するサプリメントとして推奨されている。G. lucidumに関する最新の実験的研究や非臨床試験では、抗腫瘍活性について有望な結果が示されている。しかし、有効性に関するクリニカル・エビデンスはわずかであり、医療消費者に集合的な情報を提供するシステマティックレビューが必要である。
本稿では、5件の関連性のあるランダム化比較試験を同定し選択した。計373名について解析した。メタアナリシスを実施し、各試験の利用可能なデータを統合した。我々の結果では、抗癌レジメンを受けている患者において、G. lucidum投与群では非投与群よりも化学療法や放射線療法に反応する可能性が1.27倍高かった。しかし、G. lucidum単独では、腫瘍縮小に対する有意な効果を示すデータはなかった。また、G. lucidumはCD3、CD4、CD8リンパ球の割合を大幅に増やすことで宿主免疫能を活性化する可能性がある。一方、腫瘍細胞に対する自己防衛の指標と考えられているナチュラルキラー(NK)細胞活性の上昇はわずかであった。G. lucidum群の患者はコントロール群の患者よりも生活の質が比較的良好であった。悪心や不眠など、G. lucidumによる軽度の副作用がわずかに報告された。
このシステマティックレビューの結果には限界がある。第一に、選択した研究の大半が小規模で、各試験の方法論的な質に問題があった。第二に、各試験のすべての参加者が中国の母集団で募集された。共に、結果の頑健性や適用可能性に大きく影響した。
本レビューでは、癌に対する一次治療としてのG. lucidumの妥当性を示す十分なエビデンスはみられなかった。G. lucidumが癌患者の長期的な延命に役立つのかについては不明である。しかし、G. lucidumは腫瘍反応を促進し、宿主免疫を活性化する可能性があることから、従来の治療の代替補助として投与できる可能性がある。G. lucidumの忍容性は大半の参加者で概ね良好であったが、軽度の有害事象が散発的にみられた。これらの研究で重大な毒性は認められなかった。G. lucidumの有害性はほとんど報告されなかったが、費用対効果や患者の好みを考慮したうえで抽出物を使用すべきである。今後の研究では方法論的な質の改善に重点をおくべきであり、癌患者の長期生存に対するG. lucidumの効果について、さらなる臨床研究が必要である。本レビューは2年ごとに更新する。
Ganoderma lucidumはアジアの医師や自然療法医が広く用いて推奨している生薬で、免疫系を維持する効果がある。実験的研究や少数の非臨床試験では、G. lucidumが有望な抗癌作用や免疫調節作用をもつことが示唆されている。G. lucidumは代替医療として癌患者の間で人気が高まっている。しかし、癌治療におけるG. lucidumの実際の利益を評価したシステマティックレビューはない。
癌患者の長期生存、腫瘍反応、宿主免疫能、生活の質に対するG. lucidumの臨床効果、および有害事象を評価すること。
2011年10月にCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、NIH、AMED、CBM、CNKI、CMCC、VIP Information/Chinese Scientific Journals Databaseなど、一連の広範なデータベースを検索し、ランダム化比較試験(RCT)を探した。その他に、検索で得られた論文の参考文献リストを調査し、International Journal of Medicinal Mushroomsを手作業で調べ、漢方医学の専門家やG. lucidumの製造業者に連絡を取った。今回の更新では2016年2月に検索を実施した。
病理学的に診断された癌患者を対象にG. lucidumの有効性について実薬やプラセボと比較したRCTを、本レビューに選択するうえで適格な研究とした。あらゆる種類、病期の癌を適格とした。試験について言語による制限はしなかった。
選択基準を満たした5件のRCTを本レビューで選択した。2名のレビュー著者がそれぞれに各試験の方法論的な質を評価した。共通する主要アウトカムは、世界保健機関(WHO)の基準によって評価された腫瘍反応、ナチュラルキラー(NK)細胞活性やTリンパ球コレセプターサブセットなどの免疫能パラメーター、およびKarnofskyスコアで測定した生活の質とした。長期生存率を記録した試験はなかった。関連する有害事象は1件の研究で報告された。メタアナリシスを実施し、主な試験の利用可能なデータを統合した。二値データには相対リスク(RR)、連続データには標準平均差(SMD)を用いて結果を評価し、95% 信頼区間(CI)を付した。
主な研究の方法論的な質は概して不十分で、結果報告が不適切なものが多かった。主な参加者の詳細は得られなかった。メタアナリシスの結果では、G. lucidumと化学療法や放射線療法を併用した患者では、化学療法や放射線療法の単独よりも奏効する可能性が高いことが示された(RR 1.50、95% CI 0.90 ~ 2.51、P = 0.02)。G. lucidum単独では、併用療法と同程度の退縮率はみられなかった。宿主免疫能の指標に関する結果では、G. lucidumによりCD3、CD4、CD8の割合が同時に増加し、それぞれ3.91%(95% CI 1.92% ~ 5.90%、P < 0.01)、3.05%(95% CI 1.00% ~ 5.11%、P < 0.01)、2.02%(95% CI 0.21% ~ 3.84%、P = 0.03)増加した。また、白血球、NK細胞活性、CD4/CD8率がわずかに上昇した。4件の研究では、コントロール群よりもG. lucidum群の患者で生活の質が比較的改善した。1件の研究では、悪心や不眠など軽度の副作用がみられた。血液や肝臓の有意な毒性に関する報告はなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.28]
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