注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意、多動、衝動性の特徴を伴う小児期の精神障害として多く認められる。一般的に、ADHDに対する効果的な治療は、包括的治療に頼っている。鍼治療は補完代替医療(CAM)で、副作用が少ないとされている。
他の伝統的な治療介入と比較して、比較的シンプルで、安価であり安全な治療法である鍼治療は、東洋の国々で広く用いられている。伝統中医学(TCM)の基礎理論によると、ADHDは「肝陽上亢」、「胆火上炎」、「心脾気虚」、「心腎不行」、「陰陽不和」が原因とされる。それゆえ、 ADHDの小児は過活動、落ち着きのなさ、衝動、無作法、頑固さといった臨床症状を示す。「陰陽」および「気血」はTCMで重要な概念である。経絡理論において、陰陽の主な解釈は対称性と均衡である。鍼治療は、内在する陰陽の均衡を保つ助けとなるかもしれない。TCM理論では、鍼治療は中国で「気」と呼ばれる人体の重要な要素を増強し、経絡の滞りを解消するとも考えられている。気は陰陽を行き来し、和やかで安定し、平穏な内環境を作るために和を持って協調しあっていると考えられている。
鍼治療は治療介入として西洋の国々で普及している。しかし、既存のエビデンスは、ADHDの治療に鍼治療を用いることを正当化するにふさわしいかどうかは不明である。
本レビューでは対象となる試験がなかった。レビュー著者は、小児および青年のADHDに対する鍼治療の有効性と安全性について、いかなる結論づけをするにもエビデンスが不十分であると結論づけた。小児および青年のADHDにおける鍼治療のアウトカムの標準化評価を伴った、大規模、多施設の二重盲検ランダム化比較試験が急務である。
包括的検索により、小児および青年のADHDの治療として鍼を用いたランダム化および準ランダム化比較試験のエビデンスは得られなかった。小児および青年のADHDに対する鍼治療の有効性および安全性に関して、試験数不足のため、いかなる結論にも至らなかった。本レビューは、上質で大規模なランダム化比較試験の形式で、この領域に関するさらなる調査の必要性を浮き彫りにさせた。
注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意、多動、衝動性の特徴を伴う小児期の精神障害として多く認められる。鍼治療などの補完代替療法の関心が高まっている。しかし、小児および青年のADHDに鍼治療を用いることに対して、既存のエビデンスの裏付けがされているかどうかは不明のままである。
小児および青年のADHDの治療としての鍼治療の有効性および安全性を評価する。
我々は、CENTRAL (The Cochrane Library 2010年 2号)、 MEDLINE (2010年5月21日)、CINAHL (2010年5月21日)、EMBASE (2010年5月21日)、ERIC (2010年5月21日)、PsycINFO (2010年5月21日)、 Chinese Biological Medicine Database (2010年5月10日)、Chinese Scientific Periodical Database of VIP INFORMATION (2010年5月10日)、China Periodical in China National Knowledge Infrastructure (2010年5月10日)、およびChinese Evidence-Based Medicine Database (2010年5月10日)を検索した。我々は、中国語の学会誌および議事録をハンドサーチした。
鍼治療とプラセボまたは偽鍼治療、または従来の治療とを比較したランダム化比較試験および準ランダム化比較試験。18歳未満で、いかなるタイプのADHDの参加者も対象とした。いかなる言語で書かれた論文も対象とした。
2名のレビュー著者(S Li、B Yu)がそれぞれ選択基準と除外基準に基づいて本レビューが対象とする研究を決定し、事前に作成した抽出フォームを用いてデータを抽出した。割り付けの隠蔽化、盲検化、脱落例に関して、同じレビュー著者が、試験のバイアスのリスクを評価した。ADHDアウトカムの指標は、中核症状の評価スケールより抽出し、追加の副次的アウトカムを考慮した。
本レビューの選択基準に適合する試験はなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
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