成人において、カビで損傷を受けた家屋および事務所の修復により無介入に比べて喘息関連症状および呼吸器感染が減少するという中等度から非常に低い質のエビデンスが認められた。学校の改修により職員および小児の呼吸器症状は有意に変化しなかったが、学校改修後、感冒による生徒の受診が少なくなるという質の非常に低いエビデンスが認められた。可能であればcRCTデザインとより有効なアウトカム指標を備えた、より良い研究が必要である。
建物の湿気およびカビは、居住者における有害な呼吸器症状、喘息および呼吸器感染と関連している。湿気による損傷は、個人の家、職場および学校などの公共の建物において非常によくみられる問題である。
湿気およびカビで損傷を受けた建物の改修が、気道症状、気道感染症および喘息症状の減少または予防に有効であるかどうか検討すること。
Cochrane Acute Respiratory Infections Group's Specialised Registerを含むCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2011年第2号)、MEDLINE(1951年~ 2011年6月第1週)、EMBASE(1974 年~2011年6月)、CINAHL(1982年~2011年6月)、Science Citation Index(1973年~2011年6月)、Biosis Previews(1989年~2011年6月)、NIOSHTIC(1930年~2010年11月)、CISDOC(1974年~2010年11月)を検索した。
呼吸器症状、呼吸器感染症および喘息に対する、建物改修による湿気およびカビ除去の効果を検討しているランダム化比較試験(RCT)、クラスターRCT(cRCT)、中断時系列研究および前後比較(CBA)研究。
2名のレビューアが別々に選択した研究でのデータを抽出しバイアスリスクを評価した。
8件の研究(参加者6,538例)を選択した。内訳はRCT(参加者294例)2件、cRCT(参加者4,407例)1件、CBA研究(参加者1,837例)5件であった。介入は、全改修から清掃のみまで多様であった。家屋の修復により喘息関連症状[なかでも、喘鳴(オッズ比[OR] 0.64、95%信頼区間[CI] 0.55~0.75)]および呼吸器感染[そのうち、鼻炎(OR 0.57、95%CI 0.49~0.66)]が減少するという中等度の質のエビデンスが成人で認められた。小児では、全改修を受けた群で救急外来受診回数が減少するという中等度の質のエビデンスが認められた[そのうち、平均差(MD)-0.45、95%CI -0.76~-0.14]。1件のCBA研究では、カビで損傷を受けた事務所の修復後、喘息関連症状および呼吸器症状が減少するという質の非常に低いエビデンスが示された。学校の小児および職員では、カビで損傷を受けた学校での喘息関連症状および他の呼吸器症状は、介入前後ともカビで損傷を受けていない学校の小児および職員と同程度であるという質の非常に低いエビデンスが認められた。小児では、介入後に呼吸器感染が減少した可能性があった。