鉄は小児の息止め発作(ひきつけ)の頻度や重症度を軽減する可能性があるが、効果の度合いを決定するにはさらに研究が必要である。息止め発作は幼児期に障害をもたらすことが多い現象である。息止め発作は発作とは異なり、7歳までに自然回復することが多い。比較臨床試験を対象とした本レビューでは、経口での鉄補充の忍容性は概ね良好であり、特に貧血を有する小児では、息止め発作の頻度および重症度が軽減する可能性が明らかになった。この効果が3カ月目以降も持続するかどうか、また、小児が成長して息止め発作がおこらなくなるまで鉄療法を継続すべきかどうかは不明である。
鉄補充(元素鉄5 mg/kg/日を16週間)は息止め発作の頻度および重症度の軽減に有用であると考えられる。鉄補充は鉄欠乏性貧血の小児では特に有益で、反応はヘモグロビン値の改善と相関していた。鉄補充は、貧血が認められない小児またはヘモグロビン値が低値または正常値の小児に対しても有用な可能性がある。小児の息止め発作の治療に対する鉄補充に関する質の高いランダム化比較試験がさらに必要である。
息止め発作は小児期に多く発生する。鉄補充は、小児の息止め発作の頻度や重症度を軽減すると言われている。
小児の息止め発作の頻度や重症度に対する鉄補充の有効性を評価すること。
Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(コクラン・ライブラリ)、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHLおよびmetaRegister of Controlled Trialsを検索した(2009年4月まで)。対象試験の参考文献一覧を検索した。未発表のデータまたは試験について、経口鉄補充剤の製造者および一部の試験著者に問合せを行った。
息止め発作が3回を超えて再発している18歳未満の小児を対象に鉄補充をプラセボまたは無治療と比較したランダム化および準ランダム化比較試験。これらは観察者による報告である。
主要アウトカムは、息止め発作の頻度(一定期間の回数)または重症度(意識不明または痙攣運動が認められなくなる)のいずれかまたは両方の改善であった。2名のレビュー著者(AZおよびNO)がそれぞれ試験を選択し、データを抽出した。必要に応じて、欠測データについて試験著者に問合せを行った。ドメインに基づく評価法を用いてバイアスのリスクを評価した。異質性が小さい場合は、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)で表した結果を統合し、固定効果メタアナリシスを実施した。
2件の試験(小児87名)が選択基準を満たした。これらの試験では、鉄補充によって小児の息止め発作頻度が有意に減少した(OR 76.48; 95% CI 15.65〜373.72; P < 0.00001)。鉄補充によって息止め発作の完全回復が認められた場合のみを検討したメタアナリシスでも有意な結果が得られた(OR 53.43; 95% CI 6.57〜434.57; P = 0.0002)。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
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