慢性腎臓病患者は、早期の死亡、心血管疾患(心疾患や脳卒中になる)、および腎不全(透析や腎移植が必要になる)のリスクが高い。ビタミンのサプリメントのような抗酸化物質は、このようなリスクを軽減するための、容易な方法である可能性がある。
何を行ったのか?
2022年11月時点における文献を検索し、死亡、心血管疾患、腎臓疾患、腎移植の減少に対する抗酸化物質の効果について評価を行った。研究の質を判定し、それらの結果を組み合わせて抗酸化サプリメントの効果を推定した。
何を見つけたのか?
合計10,468人の成人患者を対象とした95件の研究を対象とし、49種類の抗酸化物質について評価を行った。その結果、抗酸化物質は死亡や腎移植のリスクの低下には効果がなかったが、心血管疾患、脳卒中、および腎不全(透析を必要とする)のリスクを低下させ、また、腎機能を改善する可能性が認められた。しかし、心不全や感染症のリスクの増加も観察された。ほとんどの研究の質は低かったため、抗酸化物質の有益性や有害性を評価するためには、より質の高い研究が必要と考えられた。
結論
慢性腎臓病の成人において、抗酸化物質は死亡のリスクを低下させなかったが、心血管疾患および腎不全のリスクを低下させ、また腎機能を改善させる可能性がある。しかし、抗酸化物質は心不全や感染症のリスクを高める可能性がある。
《実施組織》小泉悠、杉山伸子 翻訳[2024.4.17]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008176.pub3》