レビューの論点

嚢胞性線維症（CF）患者の酵素欠乏症を克服するための膵酵素補充療法（PERT）の効果と、副作用の有無についてのエビデンスを検討した。

背景

膵臓が食物の消化に必要な酵素を作ることができないため、嚢胞性線維症患者の80～90％が膵酵素補充療法を実施している。必要な酵素を作れない結果、子供は体重が増えずに成長できず、大人はビタミンがうまく吸収できずに体重が減り、栄養失調になることがある。嚢胞性線維症患者の栄養不良は、全身状態の悪化、肺疾患の重症化、平均寿命の短縮につながる。嚢胞性線維症患者が膵臓が十分な酵素を作り出せない場合、多量の偏や頻繁に痛みを伴う不快な腸の動きを経験する可能性もある。膵酵素補充療法は、体重増加を助け、栄養失調を防ぎ、いくつかのビタミン不足を回避し、腸の症状をコントロールするために必要とされる。これはレビューのアップデート版である。

検索日

最後にエビデンスを検索したのは、2019年12月26日である。

研究の特徴

評価対象となったのは14件の試験（大人と小児の嚢胞性線維症患者641人）で、13件が4週間、1件が7週間の治療を行った。試験では、胃から腸に抜けるまで薬の放出を遅らせる処理をしたものと、処理をしていない異なる製剤の膵酵素補充療法を比較したものであった。12件の試験で、被験者は両方の補充療法をそれぞれ4週間行ったが、摂取する順番はランダムであった。これらの要因により、試験結果を分析することは困難であった。ほとんどの試験は古いもので、一番新しいものは2017年のものであったが、一番古いものは1986年のものであった。

主な結果

最も重要な結果（体重、身長、肥満度）を改善するために、どの膵酵素の製剤が他の製剤よりも優れているかどうかは不明である。2つの試験（41名）では、遅延放出型のマイクロスフィア（小型の薬剤カプセル）を服用した人は、遅延放出型の錠剤（通常サイズ）を服用した人に比べて、便に含まれる脂肪が少なく、腹痛も少なく、トイレに行く回数も少なかった。別の試験（12名）では、遅延放出型のマイクロスフィアを服用した人は、遅延放出型のサプリメントを服用した人に比べて、便中の脂肪も少なくなっていた。また、大規模な試験（128名）において、動物由来の酵素を使用していない膵酵素補充療法を服用した人は、豚の酵素を使用した膵酵素補充療法を服用した人に比べて、便に含まれる脂肪が少ないことが分かった。その他の腸の症状（腹痛、鼓腸、便秘など）、QOL（生活の質）、副作用、肺疾患の指標については、いずれの膵酵素補充療法製剤にも差は見られなかった。どの試験でも、入院日数やビタミン欠乏症の発生率は報告されていない。

膵臓酵素の分泌量が異なる人に必要な膵酵素補充療法の用量レベルの違い、治療開始の最適な時期、食事の種類や食事量の違いに応じたサプリメントの量などに関するエビデンスは見つからなかった。これらの疑問に答えるには、適切にデザインされた試験が必要である。

エビデンスの質

さまざまな結果に関するエビデンスの質は、せいぜい中等度で、ほとんどが非常に低度のものであることが分かった。この試験では、どのように決定されたかについての詳細が示されていないため、参加者が異なる治療群に入れられるチャンスが均等にあったかどうかは分からない。いくつかの試験では、多数の参加者が脱落し、その理由が説明されていないことが多かった。ほとんどの試験では、1つの治療法を4週間受けた後、異なる治療法に切り替えていた。このデザインにより、分析したときに実際よりも一貫性のある結果が得られる可能性がある。統合できたのは、そのような2つの試験から得られた結果だけであった。最後に、いくつかの試験では、本レビューで分析できるような方法で、結果を完全に報告していなった。これらの要因が、発見した結果に対する信頼性にどのように影響するかは定かではない。