てんかんを持つ人が処方された薬を確実に飲むためには、どのような方法があるのか?

なぜこの論点が重要か?
てんかんは、脳に影響を与える非常に一般的な症状である。てんかんを患っている人は、日常生活に影響を与える発作を経験する。そのため発作をコントロールしたり、予防するための薬が処方されることが多い。てんかんの人は、薬を処方された通りに飲むことが難しく、それが発作のコントロールが悪くなる原因と考えられている。このレビューでは、抗てんかん薬の飲み方を改善する方法が報告されている。

方法
てんかん患者の服薬アドヒアランスを向上させる方法についての臨床研究をデータベースで検索した。プライマリ・ケア(例えば、手術)、外来、または地域社会で抗てんかん薬による治療を受けている、年齢に関係なくてんかんの診断を受けた人々が参加したランダム化比較試験(RCT)を対象に検索を行った。RCTとは、治療を受ける群(介入群)と、別の治療を受けるかまたは治療を受けない群(対照群)に、参加者を無作為に割り付ける臨床研究のことである。この種の研究から、ある治療によって差が出るかどうかについて最も信頼できる科学的根拠(エビデンス)が得られる。

結果は2020年2月時点で最新である。

結果
20件の研究(2832名)を特定した。試験は様々な国で行われており、大部分はアメリカで行われた。研究では、主に3つのタイプの介入を検討した。

1. てんかんや、てんかんをコントロールするために使用される薬物などのトピックについて、参加者の教育やカウンセリングを行う(4つの研究)

2. てんかん患者に、内服の意思、特定の時間、場所、内服と日常的生活を結びつけるように求めるなどの行動介入(13つの研究)

3. 1つ以上の介入を複数使って介入する混合介入(4つの研究)

対象となった研究のうち1つは行動介入と混合介入を比較しているため、2回カウントされることになる。

研究では、例えば、アンケート、血液サンプル、エレクトロニック・ボトルトップなど、様々な方法で服薬アドヒアランスを測定した。研究では、処方された通りに薬を飲むことで違いが出たかどうかを確認するために、発作の頻度や重症度の低下も測定された。研究内容がそれぞれ大きく異なるため、結果を組み合わせることができなかった。

主な結果とエビデンスの質
教育とカウンセリングの介入は服薬アドヒアランスを改善する可能性がある。2つの研究で改善が見られ、1つの研究では小さな改善が見られ、1つの研究では改善がなかった。

行動介入と混合介入は、おそらく服薬アドヒアランスを改善する。介入群では、対照群と比較してアドヒアランスの向上を示した。

4つの研究では、介入群でアドヒアランスが改善すると、発作頻度や発作の重症度が低下することが示された。

各研究は互いに大きく異なり、必ずしも最良の方法を用いているとは限らないため、結果について確固たる結論を出すことができなかった。これは、エビデンスについて確信が持てないことを意味している。

今後の展望
抗てんかん薬の服薬アドヒアランスを向上させるための最良の介入を特定するためには、より多くの人々を対象に、より長い追跡期間で慎重に計画されたランダム化比較試験が必要である。

訳注: 

《実施組織》 冨成麻帆、小林絵里子 翻訳[2021.01.12]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008312.pub4》

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