論点
このコクランレビューの目的は、パラセタモール(アセトアミノフェン)の単回投与により、経腟分娩後の女性の会陰部痛の発生率が低下するかどうかを調べることである。この臨床疑問に答えるために、関連するすべての研究を収集し、分析した(検索日2019年12月)。
重要である理由
赤ちゃんの誕生は、女性や家族にとって特別な時間のはずである。会陰部痛は時に女性の健康を阻害し、赤ちゃんの世話をするのに支障をきたすこともある。
会陰部とは、腟と肛門の間にあるひし形の部分のことで、赤ちゃんが生まれてくるとあざ(内出血)ができたり、破れたりすること(裂傷)がある。女性の中には、赤ちゃんを産むために、会陰部を切る処置(会陰切開)を受ける人もいる。会陰切開や自然な裂傷の後は、会陰を縫って修復する(会陰縫合)必要がある。また、赤ちゃんが産まれてくるのを補助するために、鉗子や吸引による分娩が必要な場合もある。このような介入をすることで、会陰部に違和感や痛みを与えてしまうことがある。女性の活動や、授乳、育児行為が制限される可能性があるので、会陰部に傷ができたり会陰部が頻回に激しく痛んだりする可能性を減らすことが重要なのは明らかである。尿失禁や便失禁の原因になったり、セックスが苦痛になったりすることもある。痛みは数週間、数ヶ月、時にはそれ以上続くこともある。そのため、十分な痛みのコントロールが重要である。
このパラセタモールのレビューは、出産後の最初の数時間の会陰部痛を緩和するのに役立つ薬を見ているシリーズのレビューの一部である。
得られたエビデンス
今回の更新では新しい研究は見つからなかったため、レビューには1301人の女性を対象とした10件の研究が含まれている。研究は1970年代から1990年代前半までとかなり古いものであった。すべての研究では、会陰切開や裂傷に伴う会陰部痛の緩和を調べており、無傷の会陰部で痛みがあるという研究は見当たらなかった。全体的に、報告された方法論が不明確であり、所見のばらつきがあるため、エビデンスの質は低かった。
パラセタモールにより、分娩後4時間で痛みを感じる女性が減る可能性があり(10試験、1279人)、パラセタモールによって追加の痛み止めを必要とする女性が減る可能性がある(8試験、1132人)。
吐き気(気分が悪くなる)や眠気を経験した女性の数の報告は1件のみで、明確な違いは認められなかった。他の副作用はなく、どの研究も赤ちゃんへの影響を調べたものではなかった。
これが意味すること
パラセタモールは一般的に鎮痛剤としての効果があり、副作用はほとんどない。このレビューでは、経腟分娩後の会陰部痛に対してパラセタモールを単回投与することで、効果があるかもしれないことが示された。授乳中の女性は、授乳中の赤ちゃんへのパラセタモールの効果についての情報がほとんどないことを知っておくべきである。
《実施組織》小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2021.02.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008407.pub3》