糖尿病とは?足潰瘍とは?
糖尿病は血液中の糖濃度が上昇する病気で、発生が多い。長期間、糖尿病を患っている患者は足潰瘍を発生することが多い。足潰瘍は、糖尿病クリニックからの入院理由の約35%および非外傷性の下肢切断の原因の約80%を占める。
オゾン療法とは?
オゾンは気体で、糖尿病患者の潰瘍治療に用いられており、オゾン化油(オゾン化ひまわり油またはオリーブ油)または酸素とオゾンを混合したものを直接患部に用いるほか、直腸注入(腸の終わりの部分に肛門からガスを注入)する。
本レビューの目的
本レビューではオゾン療法が単独、または治療の一環として糖尿病患者の足潰瘍の治療に有効かどうか、解明を試みた。
本レビューの所見
レビュー著者は2015年3月3日までの医学論文を検索し、糖尿病患者の足潰瘍に対しオゾン療法を検討した3件の関連臨床試験(参加者212名)を同定した。得られたエビデンスの質は低かった。
参加者101名の1件の試験では、オゾン療法を抗菌薬投与と比較し、20日間の経過観察を行った。この試験の結果から、オゾン療法群では潰瘍の縮小効果が大きく、入院日数が短いことが示されたが、足潰瘍の治癒数に対する明らかな有益性は認められなかった。いずれの治療でも、有害作用(副作用または危害)は観察されなかった。
他の2件の試験(参加者111名)ではオゾン療法と通常治療の併用を通常治療と比較した。これら2件の試験結果から、潰瘍の縮小効果、足潰瘍の治癒数、有害事象の発現および切断率に明らかな群間差は認められないことが示された。
いずれの試験でも生活の質は報告されていなかった。
結論
得られた情報は限定的で質も低かったため、レビュー著者は糖尿病患者の足潰瘍の治療に対するオゾン療法の有効性に関する結論を導くことができなかった。
得られたエビデンスは試験方法が不明確な3件の小規模RCTに由来しているため、糖尿病患者の足潰瘍に対するオゾン療法の有効性に関して確固とした結論を導くことができなかった。
糖尿病(DM)患者の足潰瘍の治療にオゾン療法が有用である可能性が報告されている。
糖尿病患者の足潰瘍の治癒に対するオゾン療法の効果を評価すること。
2015年3月に、Cochrane Wounds Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(コクラン・ライブラリ)、Ovid MEDLINE、Ovid MEDLINE(In-Process & Other Non-Indexed Citations)、Ovid EMBASE、EBSCO CINAHL、Science Citation Index、Chinese Biomedical Literature Database and The Chinese Clinical Registryを検索した。言語、日付および研究方法による制限は設けなかった。
糖尿病患者の足潰瘍に対しオゾン療法をオゾン療法の偽治療または他の介入と比較したランダム化比較試験(RCT)を、出版日や言語に関係なく組み入れた。
2名のレビューアがそれぞれ収集した文献のスクリーニングを行い、関連文献を選択し、データを抽出した。相違点については別のレビューアとの協議によって解決した。対象試験の方法の質およびアウトカムのエビデンスレベルは、それぞれコクランのバイアスのリスク評価ツールおよびGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)を用いて評価した。二値アウトカムについてはリスク比(RR)を、連続アウトカムについては平均差(MD)を用い、95%信頼区間(95% CI)を併記してデータを示した。データの解析にはReview Manager(RevMan)ソフトウェアを用いた。
3件の試験(参加者212名)を本レビューに組み入れた。2件の試験では全体的なバイアスのリスクが高く、1件の試験では不明であった。
1件の試験(参加者101名)では、糖尿病患者の足潰瘍に対し、オゾン療法を抗菌薬と比較した。この試験の追跡期間は20日間であった。試験の結果、オゾン療法は、抗菌薬投与よりもベースラインから試験終了時までの潰瘍範囲の縮小効果が大きく(MD -20.54 cm2, 95% CI -20.61〜-20.47)、入院期間も短縮したが(MD -8.00日, 95% CI -14.17〜-1.83)、20日間に治癒した潰瘍の数には影響を与えない(RR 1.10, 95% CI 0.87〜1.40)ことが示された。いずれの群でも副作用は観察されなかった。
他の2件の試験(参加者111名)では、糖尿病患者の足潰瘍に対し、オゾン療法と通常治療の併用を通常治療と比較した。メタアナリシスの結果、潰瘍範囲の縮小効果(MD -2.11 cm2, 95% CI -5.29〜1.07)、潰瘍の治癒数(RR 1.69, 95% CI 0.90〜3.17)、有害事象(RR 2.27, 95% CI 0.48〜10.79)および切断率(RR 2.73, 95%CI 0.12, 64.42)のアウトカムに関する群間差のエビデンスは示されなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
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