癒着性の小腸閉塞(SBO)に対して経口摂取する中薬(中医学の薬草療法)

SBOは一般的な手術において、最も頻度の高い緊急を要する合併症の一つである。腹腔内癒着は、腹部手術において、最も頻度の高い合併症である。術後の腹腔内癒着によるSBOは、再入院率が高く、費用がかかることと関連する。従って、非手術的な管理が好ましい。中薬(中医学の薬草療法)は、中国において癒着性SBOの治療によく用いられる。本レビューは、計664名の参加者を対象とした、5つの異なる中薬を用いた5件のランダム化試験を調査した。すべての試験は中国で実施され、発表された。いずれの試験も有害作用は報告していなかった。これらの研究における方法論的限界は非常に明白であり、その結果に基づく結論は慎重に出すべきである。本システマティック・レビューにおいて、癒着性SBO患者に対する中薬の客観的な有効性と安全性を裏付ける十分なエビデンスは認められなかった。癒着性SBOに対する経口中薬を評価する、さらに高品質な試験が緊急に必要とされている。

著者の結論: 

多くの研究が癒着性SBOに対するTCM製剤の使用を評価してきたが、その大部分は方法論的限界のために本レビューから除外された。本システマティック・レビューでは、癒着性SBOの患者に対するTCMの客観的な有効性と安全性を裏付ける十分なエビデンスは認められなかった。大規模なサンプルサイズの試験数が不十分で、適切にデザインされた高品質な試験ではなく、安全性情報が欠如していることを考慮すると、肯定的なエビデンスは注意深く解釈されるべきである。従って、癒着性SBOに対する中薬の有効性に関するより正確で意義深いデータを生成するためには、より大規模なサンプルサイズと高品質、ランダム化された、比較試験のさらなる研究が必要である。

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背景: 

小腸閉塞(SBO)は、一般的な手術において、最も頻度の高い緊急を要する合併症の一つである。腹腔内癒着がSBOの主な原因である。手術は新たな癒着を誘発する可能性があるため、腹膜炎または絞扼の徴候がない場合には、非手術的な管理が好ましい。経口の中薬(中医学の薬草療法)は、中国において癒着性SBOを治療するための非手術療法として長く用いられてきた。癒着性SBOの解消に対する治療価値を調べるために、多くの比較試験が実施されている。

目的: 

本レビューの目的は、癒着性小腸閉塞に対する経口中薬(TCM)の有効性および安全性を評価することであった。

検索戦略: 

我々は、言語や出版の制限を設けず、以下のデータベースを検索した。 Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、Chinese Biomedical Database (CBM)、China National Knowledge Infrastructure/Chinese Academic Journals full-text Database (CNKI)、VIP(中国学術誌の全文データベース)検索は2011年11月に行われた。

選択基準: 

癒着性SBOと診断された参加者において、中薬の経口投与、胃管による投与、またはその両方と、プラセボまたは従来の治療とを比較したランダム化比較試験および準ランダム化比較試験。我々はまた、癒着性SBOの患者に対するTCM(経口投与、胃灌流、またはその両方)+従来の治療と従来の治療単独とを比較した試験も考慮した。癒着性SBOの治療における経口中薬の安全性と有効性に言及した研究も考慮された。

データ収集と分析: 

2名の著者がそれぞれデータを収集した。我々は、以下の方法論的基準に基づいてバイアスのリスクを評価した。ランダムシーケンス生成、割り付けの隠蔽化、盲検化、不完全なアウトカムデータ、選択的アウトカム報告、その他のバイアス要因2値データはリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を用いて示し、連続アウトカムは、平均差(MD)および95%CIを用いて示した。データ解析は、Review Manager 5.1を使用して実行された。必要な情報が論文に報告されていなかった場合、我々は追加情報について主著者らに連絡を取った。

主な結果: 

664名の参加者を対象とした5件のランダム化試験を分析した。これらの試験は、活血通腑湯、小承気湯、小承気湯と四君子湯の併用、腸粘連松解湯、および復方大承気湯の5種類の中薬を検討した。検討した薬草組成物および投与方法にはさまざまなばらつきがあった。試験で報告された主なアウトカムは、腹痛、腹部膨満、便秘、治療後の最初の排便の時間、および疾患の経過中の再手術率に対する効果であった。小腸灌流などの合併症(腸切除術、器官系統の合併症、および他の可能性のある合併症)、入院期間、入院費用、および入院から外科的介入までの時間など、本レビューで選択した副次的アウトカムは得られなかった。5件の試験結果において、従来の治療と併用したTCMを受けた患者は、従来の治療単独を受けた患者と比較して、改善したと思われるアウトカムを示した(OR 4.24、95%CI 2.83〜6.36)。

しかし、不適切な報告、品質の低い方法論、およびさまざまなバイアスが存在したため、本レビューにおけるTCMの有効性を決定的にすることはできない。さらに、レビューした試験のいずれも有害事象について論じていなかったので、我々は癒着性SBO患者に対するTCMの安全性を評価することができなかった。すべての試験は中国で実施され、発表された。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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