12歳未満の小児における健康と発達改善のための週1、2または3回の鉄補充食品

世界で約6億人の就学前と学齢期の小児が貧血である。このような症例の半数は鉄が足りないために生じると推測されている。小児期の鉄欠乏性貧血により、成長が遅れ、運動や脳の発達が低下し、病気や死亡が増える場合がある。貧血を速やかに治療しないと、こうした問題は後年まで持続する可能性がある。鉄を含む栄養補助食品(葉酸や他のビタミン、ミネラル類と併用されることもある)を毎日摂取することで、小児の健康が改善することが示されているが、栄養補助食品には、吐き気、便秘、歯の着色などの副作用があるため、その使用は限られている。鉄を週1、2または3回投与すること(「間欠的」補充として知られる)で、このような副作用を減らし、忘れずに摂取することを容易にし 、そのため小児が鉄補充食品摂取を継続することを促す可能性があると示唆されている。

我々は、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの20ヵ国の小児13,314例(女児49%)が参加した研究33件を解析し、間欠的鉄補充を単独または他のビタミンやミネラル類と併用で用いた場合の栄養状態と発達アウトカムに対する効果を評価した。出生から12歳までの小児を対象に、プラセボ、無介入、毎日補充と比較した。

研究の質はさまざまであった。全体として、このレビューの結果から、鉄単独または他のビタミンやミネラル類と併用で栄養補助食品を週1、2または3回小児に投与することにより、鉄補充食品の摂取なし、またはプラセボと比較して、貧血になるリスクが約半分に低下することが示されている。小児に間欠的に補助食品を投与することは、ヘモグロビン濃度とフェリチン濃度の改善に毎日補充と同程度に有効であったが、間欠的補充を受けた小児のほうが貧血になるリスクは高かった。

我々は、間欠的補充が疾患、死亡、学業成績や身体的能力、その他の副作用に及ぼす影響を検討することを目的としたが、強固な結論を導き出すには情報が不足していた。

要約すると、間欠的鉄補充は、プラセボまたは無介入と比較して、12歳未満の小児において、ヘモグロビン濃度改善と貧血または鉄欠乏のリスク低下には有効であったが、貧血予防またはコントロールには毎日補充よりも有効性が低かった。間欠的補充は、毎日補充が失敗しているか実施されていない状況では実行可能な公衆衛生上の介入である可能性がある。しかし、死亡率、有病率、発達アウトカム、副作用に関する情報はいまだ不十分である。

著者の結論: 

間欠的鉄補充は、プラセボまたは無介入と比べ、12歳未満の小児において、ヘモグロビン濃度改善と貧血または鉄欠乏のリスク低下には有効であったが、貧血予防やコントロールには毎日補充よりも有効性が低かった。間欠的補充は、毎日補充が失敗しているか実施されていない状況では実行可能な公衆衛生上の介入である可能性がある。しかし、死亡率、有病率、発達アウトカム、副作用に関する情報はいまだ不十分である。

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背景: 

世界で約6億人の就学前および学齢期の小児が貧血である。このような症例の半数は鉄不足のために生じると推測されている。小児期の鉄欠乏性貧血の結果として、成長遅延、学業成績低下、運動発達と認知の発達障害、罹病率と死亡率上昇などがある。鉄補充食品の毎日投与は、小児の鉄栄養状態の改善に広く用いられる方策であるが、副作用のためにその効果は限られている。副作用には、悪心、便秘、歯の着色などがありうる。その結果、間欠的鉄補充(週1、2または3回の非連続の日)が毎日補充に代わる効果的でより安全な選択肢として提案されている。

目的: 

間欠的鉄補充を単独または他のビタミンやミネラル類との併用で、出生から12歳までの小児を対象に、栄養状態と発達アウトカムに対する効果をプラセボ、無介入、毎日補充と比較して評価すること。

検索戦略: 

2011年5月24日に、以下のデータベースを検索した。CENTRAL(2011年 第2号)、MEDLINE(1948年~2011年5月第2週)、EMBASE(1980年~2011年第20週)、 CINAHL(1937年~現在),POPLINE(利用可能な年すべて)および 世界保健機関国際臨床試験登録プラットフォーム(WHO International Clinical Trials Registry Platform [CTRP])。2011年6月29日、以下のデータベースで利用可能な年すべてを検索した。SCIELO,LILACS,IBECS およびIMBIOMED。また、関連組織に連絡し(2011年7月3日)、現在進行中および未公表の研究を特定した。

選択基準: 

個別ランダム化またはクラスターランダム化を行ったランダム化試験および準ランダム化試験。参加者は、特定の健康問題がない、介入時に12歳未満の小児であった。評価した介入は間欠的鉄補充で、プラセボ、無介入または毎日補充と比較した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアがそれぞれ組み入れ基準に対して研究の適格性を評価し、選択した研究からデータを抽出し、それらの研究のバイアスリスクを評価した。

主な結果: 

ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの20ヵ国の小児13,114例(女児49%)が参加した試験33件を選択した。これらの試験の方法論の質はさまざまであった。

試験19件で無介入またはプラセボと比較して間欠的鉄補充を評価し、試験21件で間欠的補充を毎日鉄補充と比較して評価していた。これらの試験の一部は、両方の比較にデータを提供していた。大多数の試験で鉄単独が投与された。

試験15件で60カ月齢未満の幼児が対象であった。試験11件で60カ月齢以上の小児が対象であり、試験7件で両方の年齢区分の小児が対象であった。試験1件で女児のみを対象とした。試験7件で貧血の小児のみを対象とした。試験3件で貧血ではない小児のみを評価した。残りの試験ではベースライン時の貧血の有病率は15~90%の範囲であった。

無介入またはプラセボ投与と比較して、間欠的に鉄補充食品を摂取した小児は貧血のリスク(平均リスク比(RR)0.51、95%信頼区間(CI) 0.37 ~ 0.72、試験10件)と鉄欠乏のリスク(RR 0.24, 95% CI 0.06~ 0.91、試験3件)が低く、ヘモグロビン濃度(平均差(MD)5.20 g/L, 95% CI 2.51~7.88、試験19件)とフェリチン濃度(MD 14.17 µg/L、 95% CI 3.53~24.81、試験5件)が高かった。

間欠的補充は、ヘモグロビン濃度(MD –0.60 g/L、95% CI –1.54~0.35、試験19件)とフェリチン濃度(MD –4.19 µg/L、 95% CI –9.42~1.05、試験10件)改善について毎日補充と同程度に有効であったが、鉄の毎日補充と比較して貧血のリスクは高かった(RR 1.23、 95% CI 1.04~1.47、試験6件)。アドヒアランスに関するデータは乏しく、間欠的補充を受けた小児で高い傾向が認められたが、この結果は統計学的に有意ではなかった。

間欠的補充レジメンのタイプ(週1、2または3回)、元素鉄の週あたりの総用量、栄養成分、補充を受ける者が男児か女児か、介入期間の長さによる異なる効果は特定されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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