褥瘡治療のための光線療法

褥瘡とは何か?

褥瘡(床ずれまたは圧迫潰瘍とも呼ばれる)は、常に圧迫または摩擦を受けることが原因で皮膚に生じる潰瘍である。例えば高齢者や麻痺のある人のように動けない、あるいは自身で動くのが困難な人が、通常、冒される。褥瘡は、かかとおよび股関節部、また尾骨(尾てい骨)などの身体の骨ばった部分に生じることが多い。褥瘡は、必ずしも治癒するとは限らず、治癒する場合でも長期間かかる。

光線療法とは何か?

光線療法は、身体の一部を日光または特定の波長の光線にさらす治療法である。さまざまな疾患の治療に使用され、光線およびレーザーを用いる場合がある。光線療法は、潰瘍の治癒までにかかる時間が短縮すると期待されて褥瘡の治療に用いられている。

このレビューの目的

本レビューでは、標準治療(圧迫軽減、創傷から壊死組織を除去、感染制御、包帯の使用)に加えて光線療法を施すことで、褥瘡の治癒期間が改善するかどうかを見出そうと試みた。標準治療と光線療法の併用は、標準治療単独、標準治療と偽光線療法の併用、標準治療と別タイプの光線療法の併用との比較が考えられた。

このレビューの調査結果

レビュー著者は、2014年1月7日までの医学文献を検索し、関連性のある7件の臨床試験(参加者403人)を同定した。光線療法の使用を標準治療単独と比べた試験が6件、標準治療および偽光線療法の併用と比べた試験が1件であった。1件のみが別タイプの光線療法を検討する第三の群を設定していた。

2件の試験では、褥瘡が完全に治癒するまでにかかる時間が報告され、紫外線による治療を受けた光線療法群の患者の治癒時間が改善を示した。しかし、この結果の解釈には注意が必要である。これらの試験は小規模で、質が不良の試験であり、バイアスのリスク(すなわち、誤解を招きかねない結果を伴う)が不明で、この知見は偶然による可能性があるからである。他の試験では、矛盾する結果が報告されたり、評価項目/時点が試験により異なっていたため、光線療法が褥瘡の治療に有効であるかどうかに関して結論を得ることができなかった。2件の試験では、害になる(有害な)作用が報告され、光線療法と標準治療群とで有意差はみられなかった。4件の試験では資金情報が明らかにされ、2件は産業界からの資金、他の2件は研究施設からの助成金を得ていた。いずれの研究でもQOL、入院期間、疼痛、費用に関する報告はなかった。

本レビューで同定した少数の小規模な研究では、光線療法を褥瘡のルーチン治療として使用することを支持するにはエビデンスが不十分であった。この治療の有効性と安全性を確立するまでには、さらに多くの試験を実施する必要がある。

著者の結論: 

褥瘡の治療に対する光線療法の効果は非常に不明確である。バイアスのリスクが不明で、解析に利用できる試験が少数であるため、エビデンスの質は非常に低い。この治療法の利益または害の可能性を除外できない。さらなる研究が推奨される。

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背景: 

褥瘡は「皮膚および/または下層組織の局所的損傷領域で、通常、骨の隆起部であり、圧迫または圧迫とずれの組み合わせの結果生じる」と定義されている。光線療法――すなわち、光線(またはレーザー)を補助的に手術以外の介入として、治癒に対する治療効果を得ることを目的として用いる――の使用が最近増加している。

目的: 

褥瘡の治癒に対する光線慮法の効果を検討すること。

検索戦略: 

2014年1月、Cochrane Wounds Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、Ovid MEDLINE、Ovid EMBASE、Ovid MEDLINE (In-Process & Other Non-Indexed Citations)、およびEBSCO CINAHLを検索した。検索には言語または発表日による制限を設けなかった。

選択基準: 

光線療法(標準治療と併用)の効果を、偽光線療法(標準治療と併用)、別タイプの光線療法(標準治療と併用)、または標準もしくは従来治療単独と比較するランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が、選択基準に従って関連性とデザインに関して研究を評価し、データを抽出し、研究の質を評価した。著者らは、論文の著者に問い合わせ、欠測データの入手を試みた。不一致があれば、合意と第三のレビュー著者との議論により解決した。

主な結果: 

403人の参加者を対象とした7 件のRCTを同定した。これらの試験はいずれもバイアスのリスクが不明であった。試験では、光線療法使用を標準治療単独(6件)または偽光線療法(1件)と比較していた。これら試験のうち1件のみが別タイプの光線療法を適用する第三の群を設定していた。 全体として、褥瘡治癒のための光線療法の相対的効果を定めるにはエビデンスが不十分であった。完全治癒までの時間は3件の研究で報告されていた。2件の研究では、紫外線(UV)治療群で完全治癒までの平均時間が対照群よりも短いことが示された(平均差-2.13週(95%CI -3.53~-0.72、P値0.003))。1件の研究では、レーザー群で完全治癒までの平均時間が対照群よりも長いことが報告された(平均差5.77週、95%CI-0.25~11.79)。しかし、この結果の解釈には注意が必要である。これらは小規模な研究で、その知見は偶然による可能性があるからである。3件の研究では、治癒した潰瘍の割合が異なるデータにより報告されていた。1件の研究の報告では評価項目が異なり、他の2件では治療期間が異なっていた。このような差異により、研究を統合し、光線療法が有効か否かに関する結論を導き出すことはできなかった。有害作用を報告していたのは光線療法を対照と比べた2件のみで、有害事象のリスク比は不正確であった。1件がリスク比(RR)0.72(95%CI 0.18~2.80)を報告していた。しかし、もう1件では、事象発現者数ではなく、各群における事象件数に基づきRR 0.89(95% CI 0.71 ~1.12)が報告されていた。潰瘍部位における変化の率を報告していた5件のうち、3件では2群間に統計学的有意性は認められなかった。報告された評価項目に差異があったため、統合は行われなかった。この結果は、ランダム割付けの順序生成、割付けの隠蔵化、アウトカム評価者の盲検性が不明でバイアスのリスクが不明な試験からのデータに基づくものであった。いずれの研究でもQOL、入院期間、疼痛、費用に関する報告はなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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