レビューの論点
歯周病治療は、高血圧の予防や、高血圧の人の血圧を下げることができるのか?
背景
歯周炎は、歯肉炎(歯周病)が重症化したもので、高血圧に大きな影響を及ぼす動脈硬化性プラーク(脂肪、コレステロール、カルシウムなどが血管内に蓄積したもの)にも含まれるいくつかの特定の細菌が原因となっている。複数の研究により、歯周炎と高血圧の関連が示されている。歯周病治療が高血圧の予防や治療につながるかどうかを評価することは重要である。
検索期間
エビデンスは2020年11月までのものである。
研究の特性
8件のランダム化比較試験(2つ以上の治療群のいずれかに参加者を無作為に振り分ける臨床研究)を対象とし、894人が参加した。研究では、年齢・性別を問わず、また、高血圧の有無にかかわらず、歯周炎と診断された参加者を対象に、歯周病治療の予防・治療効果による血圧の変化を調べた。
主な結果
心血管疾患(高血圧を除いたもの)の有無に関わらず歯周炎と診断された人を対象に、歯周病治療と無治療で血圧の変化を比較した研究が4件見つかった。その結果、治療を受けた人と受けていない人の比較では、どの期間においても、血圧に差が出ないことが示された。
慢性歯周炎の人を対象に、歯周病治療と歯肉縁上スケーリング(目に見える歯石を取り除くだけで、歯周炎への治療効果は限定的)を比較した研究が3件見つかった。その結果、どの期間においても、血圧に差が出なかった。
高血圧の人を対象とした1件の研究のみに、グループ間の比較で短期的な血圧の低下が見られたが、その他の比較では血圧の変化に差はなかった。
エビデンスの質
このレビューに含まれた研究がどのように実施され、記述されたのかが十分に示されていなかったため、エビデンスの質は低かった。そのため、しっかりとした結論を出すための情報が不足していた。
《実施組織》堺琴美、屋島佳典 翻訳[2021.12.20]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください《CD009409.pub2》