嚢胞性線維症におけるビタミンE補充

レビューの論点

ビタミンE欠乏症によって嚢胞性線維症の患者に健康問題が発生する頻度に対して、ビタミンE補充(摂取量は問わず)にはどのような効果があるかを明らかにしたいと考えた。

背景

嚢胞性線維症患者の約85%~90%は、膵臓で酵素が十分に生成されないため、食物を消化する際に脂質を吸収できない。そのため、脂溶性のビタミンA、D、EおよびKの吸収に問題がある可能性が高い。ビタミンEの値が低すぎると、血液疾患のほか、神経系、記憶および思考能力に問題を引き起こす可能性がある。

検索期間

2020年7月20日時点でのエビデンスを最後に検索した。

研究の特性

本レビューでは研究4件(参加者計141例)を同定した。そのうち2件が小児(生後6カ月~14.5歳)を対象とし、残り2件は参加者の年齢を記載していなかった。研究参加者は、異なる剤型のビタミンEサプリメント(水溶性または脂溶性)またはプラセボ(有効成分を含んでいない物質)を摂取したか、あるいはサプリメントをまったく摂取しなかった。3件の研究は各参加者の治療をランダムに割り付けたとしていたが、1件の研究は参加者を異なる群に分けたという記載しかなかった。

主な結果

水溶性ビタミン E

研究1件(参加者45例)のエビデンスから、補充によって6カ月後には血中のビタミンE値が上昇すると考えられることがわかった。同じような結果が、それ以前の1カ月時点(2研究、参加者32例)および3カ月時点(1研究、参加者45例)でも認められた。研究1件(参加者45例)のみが1カ月時点および6カ月時点での体重を報告していたが、いずれの時点でも補充群とプラセボ群の間に差は示されなかった。

脂溶性ビタミン E

研究2件(参加者36例)は、脂溶性ビタミンEサプリメントを1カ月補充したところ、無治療と比較して、血清ビタミンE値が高値であったことが報告されているが、別の研究(参加者36例)では、3カ月後の時点で補充群と無治療群に差はなかった。

いずれの研究にも、本レビューで明らかにしようとしたアウトカムであるビタミンE総脂質比、ビタミンE特異的欠乏症の発生率、肺機能や生活の質(quality of life:QOL)に関する報告はなかった。

各研究で使用していたサプリメントの剤型および用量がさまざまであったため、結果を統合して、幅広い嚢胞性線維症集団に適用することは困難であった。得られた結果は、ビタミンE補充によって嚢胞性線維症の人のビタミンE値の改善につながる可能性があることを示していたが、エビデンスの質は低かった。

今後の研究では、特に膵酵素およびビタミンEによる治療をすでに受けている人に対して、ビタミンEの状態、肺機能および栄養状態などのより特異的なアウトカムを検討することが望ましい。さらに、臨床的に最も効果的となるビタミンEサプリメントの必要量も検討が必要と思われる。

エビデンスの質

以下の理由から、エビデンスの質は低いと判断した。研究参加者のなかでサプリメントとプラセボのどちらを摂取したのかがわかる者はいないと思われるため、それは結果に影響を及ぼしていないと思われる。ただし、サプリメントを摂取しているか何も摂取していないかは、参加者にはわかっていたと思われる。全参加者がいずれかの群に同じ確率で振り分けられるように設計されていたかどうか、ほとんどの研究において、入手した情報からはわからなかった。また、参加者がどの群に振り分けられるかを本人があらかじめ推測できたかどうかはわからなかった。研究参加者に関して報告された結果があるかどうか、また参加者が研究から脱落した理由があるかどうかは不明であった。以上の事実が結果の信頼性に影響を与えるかどうかは不明である。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2020.12.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD009422.pub4》

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